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chapter.1-6
「…言っておくと本郷さんは心配してますよ。粗方交友関係当たっても何にも手掛かりがない、電話も回線が生きてるのに掛からないんじゃ流石に」
「うるせーな、滅多な事言うなよ」
「警察に届け出も出したし、派遣調査隊も一部動かしてるし。出来る範囲では一応捜してる?みたいな」
「最後ぼかさないで」
「…本郷さん、思い当たる場所は本当にすべて当たったんですか?」
成り行きを見守っていた戸和が、迷子紐を掴んだまま念を押す。
束ねた腕を叩く指を止め、上司は妙な間を置いて口を開いた。
「いや、実は一件だけ…」
其処で不意に留まる。
どうやらインカムが入ったらしく、右耳を押さえ固まった。
何か、メインルームから呼び出しだろうか。
押し黙る萱島の手前、本郷は2、3受け答えて無線を切る。
「なあ牧主任」
「…はい?」
「今日来客のアポなんてあったか」
「いえ、受けてませんけど」
揃って首を傾けたのち、本郷は一言断るやメインルームへ走ってゆく。
「来客?」
「そのようで」
「アポなし訪問って…なんかっこう、物凄く嫌な予感がするんですけども」
全員が顔を曇らせるのも致し方ない。
なんせ数年前、その更に前、計2回も武装集団が本部へ突っ込んできているのだ。
ただこの度は当日ながら、真正面より責任者を呼びつけているらしい。
懸念を抱きながらもメインルームへ駆け付けた本郷は、間宮からエントランスへ繋がる受話器を受け取った。
「…お待たせ致しました、副社長の本郷です」
『――お世話になっております、トワイライト・ポータルの者です。神崎社長と面会のお約束をさせて頂いてまして』
「神崎と…?」
それは一体、いつの話だろうか。
一旦断って保留にするや、同様に怪訝な面の間宮を見やる。
しかし返って来たのは黙って首を振るだけの返答だ。困惑しつつも再び回線を繋げ、本郷は先ずは連中の思惑を見極めようとした。
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