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chapter.1-7
(そもそもトワイライト・ポータルって何だよ)
『――ご不在ですか…?それは困りました、契約は済みましたが具体的な話が進んでおりませんので』
「申し訳御座いません、受注のお話でしたらお手数ですが今一度私どもの方で…」
『受注?…いいえ?とんでもない…!まさか何もお聞きになってらっしゃらないんですか?』
はたと一帯の動きが止まった。
聞いていないも何も、最近じゃ姿も見ていないのだ。
また自分の知らぬ間に、勝手に事を進めていたのか。
曖昧な返答しか出来ない本郷へ、次いでトワイライト・ポータルとやらは衝撃的な言葉を寄越していた。
『私どもは先般、御社の買収契約を結ばせて頂いたんですよ』
「………は?」
『もう価格協議も済んで書類も一式揃っております故、後は社長と今後のお話を…と考えていたのですが』
さしもの本郷も頭が真っ白になり、処理へ数秒を要していた。
漸く中で話を聞く旨を伝えたが、この急展開は一体。
「副社長、何の用件でした?」
追いついてひょっこり顔を見せた牧が問うも。
受話器を持ったまま微動だに出来ず、ギリギリと首をだけを其方へ回す。
「おい牧」
「はい?」
「新しい社長が来た」
「…ふん?」
未だ紐を繋いだ2人も現れ、メインルームの異様な空気へ眉を顰める。
「なんか知らんが、うちの会社は売却されたらしい」
戸和が僅か目を眇めた隣、萱島が今年最高のリアクションを見せる。
突っ込みたい件があり過ぎて誰も二の句が継げぬ中、やっと受話器を置いた本郷が苦言を呈していた。
「…黄昏への入り口って何だよ」
さて牧はもう、何も言うまいと決めた。
何やら此処の全員が与り知らぬ間に、勝手に社の買収交渉が進んでいたらしい(合法なのかは知らないが)。
おまけに買収先の会社がアポなしで来たかと思えば、お目見えしたのはこれでもかと乳のデカい姉ちゃんだった。
残念ながら今日はもう仕事どころではない。
このジェットコースター展開含め、色んな意味で。
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