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chapter.1-12

「…居てくれよ頼むから」 敷地に着くや簡易ゲートを通って車を降りる。 そのままエントランスへ突っ込もうとしたが、当たり前に今日も警備へ呼び止められた。 「ゲストの方ですか?ご用件を伺います」 「御坂です御坂、いつも言ってますが所長に用事です」 「失礼ですが、その様な者は在籍しておりませんが」 そしてまたこの衝撃展開だ。 何かが裏でガタガタ回り出したのを感じつつ、本郷はじっと警備を睨んでいた。 「…先週まで居たでしょう、メガネ掛けたクソ野郎が」 「現在は在籍しておりません。恐れながら、私どもが公開出来る情報は其処までです」 冷血役人とは言え、この警備も何度も顔を合わせている。 相手は相手で参っているのか、“公開出来ない”との情報は本郷へ漏らしてくれた。 「…成程、失礼した」 早々にエントランスを離れ、考え込みながらも車へ引き返す。 神崎からの又聞きだが、御坂は元より此処の人間ではない。 更に公開出来ないということは、この施設より更に上層部から緘口令が敷かれているのだろう。 「どうも本業とやらに戻ったらしいな…だがこのタイミングか」 何やら壮大なものを感じるも、結局また行き詰ってしまった。 一先ず早々に本部へ戻らねば。 研究所を脱して一般道を急ぐ。少々濡れた路面を走らせていたところ、ふと本郷はサイドミラーの違和感へ吸い込まれた。 (あの車さっきも) 大して目立つ外観でもない、黒のスポーツカー。 それを記憶していたのは偶々だが、行き道にも奴は背後を追走していたのだ。 これは完全に尾けられている。 黙ってハンドルを切るや、矢張り相手は少々遅れて右に倣う。 さあ鬼が出るか蛇が出るか。 何でも良いから事態を進めてくれとばかりに、本郷は予定のない路地裏へと車体を向けていた。

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