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chapter.1-13
尾行はもう隠れもせず、堂々と背後をついてきた。
徐々に間隔が狭まり、後部にヘッドライトが覆い被さる。
本郷は静かにスピードを緩め、車を通路へ停車させた。
すっかり市街から離れたものの、未だ攻撃される気配は無い。
なるようになれと車を降りて振り返る。
間隔を開けて停まった車から、同様に数人のスーツが湧き出てきた。
「――本郷義世か?」
「お宅は?」
「話は後だ、車へ乗ってもらう」
何だそれは。
横暴すぎる物言いに、さしもの本郷も不満を呈す。
「忙しいんだ俺は、用件を言ってくれ」
「車内で話す!こちらとて急用だ!」
だから急を要するなら、尚更用件を教えろと言うんだ。
融通の利かないやり取りへ苛立ちつつ、本郷は密かに上着のリボルバーを確かめた。
(…さてはコイツらも知らんなこれは)
「従わんなら強制連行するぞ!」
連行だと。
まるでポリ公の様な言い草へ目を見開く。
もしやこのお堅い脳みそと言い、こいつらも公僕ではないのか。
しかしそれなら、身分証くらいは出してくれそうなものを。
「さあ車へ乗れ…!」
咄嗟に相手が伸ばした腕を阻む。
連行されてなるものかと力を籠めれば、骨と共にスーツの男が悲鳴を上げていた。
「ぐ、ぐぅう…!何だお前…あ、握力の化け物か…!」
「何だコイツは!腕を掴んだだけでチーフが動けなくなったぞ!」
それは常日頃神崎を殴るというだけの名目で、人知れず筋力を鍛えていた為か。
凡そ管理職には不要で、おまけに標的が死ねば水の泡となる努力へ不意に虚しくなる。
「おいやめろ!やめるんだゴリラ!」
「黙れ誰がゴリラだ!誰がB型だ!」
「落ち着け!落ち着くんだ!チーフの腕が折れてしまう!」
何だか俄かにヒートアップする渦中、お前が引け、いやお前がと生産性のない攻防が続く。
よもや一時休戦かと思われた先、今度は騒ぎの頭上を発砲音が劈いた。
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