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chapter.1-16
「…ねえ、身を隠しながら私たちの買収に応じる意図って何だと思う?」
実はカレンとて神崎と対面した事もない。
アポイントメントが取れた試しもない。
彼は此方が危険だと理解して距離を置きながら、何故か買収相談へは応じた事になる。
「協議に応じたのが当人で、未だ生きている…というのが前提ですが」
補佐役の男がメガネを押し上げ、漸く真っ当なコメントを寄越す。
「我々を泳がせ、目的を探る気なんじゃないですかね」
「ふうん…成る程ね」
その間に社員が危険に晒されるのはどうでも良いという事か。
此方が大量の人質を獲得したというのに、お出ましにならないとは薄情な。
「…やっぱり死んだのかしらね」
「――お話し中すみません!CEOから電話が来てます!」
「げっ」
メガネの副官が顔を歪める。
この僅か数分すら我慢出来ず、態々電話まで掛けてきたと言うのか。
「ほんっと面倒臭いわねあのナルシスト、童貞のくせに」
「私めが出ましょうか?」
「いいわ、神崎が死んだかもしれない件は黙ってるとして…取り敢えず見聞きした内容だけでも教えてやらないとね」
大体国際電話なんて高いのだから、文面で済ませて欲しい。
鏡台から退いて踵を下ろすや、カレンは何度目か分からぬ溜息を吐いた。
「私たちは明日からも忙しいわよ。他の対象者を見つけなきゃ」
「…もう面談を進めますか?」
「ええ」
抜群のプロポーションがデスクの合間をすり抜ける。
そのままコピー機から印字したレポートを奪い、もう行くとばかりに呼びに来た新人を追いやった。
「全員あの会社に居る事は分かってるもの、焦らず一人ずつ捜しましょう」
「Twilight…Twilight、あったこれだ」
ラップトップを睨んでいた萱島が声を発する。
戸和と牧が覗き込めば、確かに契約書にある会社情報が載っていた。
「ふーん…取り敢えず法人登録はしてるみたいだな」
「有価証券報告とか出してないのか」
「その辺は間宮の方が詳しいから聞いてみよう」
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