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chapter.1-17
牧がB班へインカムを入れるのを横目に、カチカチと海外サイトやキャッシュデータを行き来する。
「それにしても遅いねえ本郷さん」
「ああ、御坂先生が捕まったなら良いが」
神崎が不在の現状、社の舵取りに関しては彼しか知り得ない。
そうでなくても萱島は思う。
平静な振りこそしていようが、この穴は本部へ目に見えない影響を及ぼしている。
社畜量産機だろうが人格破綻者だろうが、あの経営者は確かに全員の精神的支柱であったのだ。
「…心配な癖に」
「ん?」
独りごちた萱島を覗き込み、戸和が目を眇める。
「何だ、疲れたのか」
最近はすぐ隣の距離感が当たり前になっていた。
そっと伸びた指が、心なしか色の悪い頬を擽る。
「飛行機で寝てなかったろお前」
「…へーき」
「一段落したら仮眠室で…」
「はいはい、職場でイチャイチャしないの」
呆れて割り入る牧にはっとする。
否そんなつもりは毛頭無かったが、萱島は頬を赤くして椅子へと縮こまった。
「それにしても普通にヤバくない?この会社…本社の位置イラクだぞ」
「…ほんとだ」
「今あそこ凄いことなってるじゃん、ISISだかISILだか…」
「え、そうなの」
余りの多忙にニュースを見ていなかった。
情報サービス業として許されざる事だが、自宅に帰る隙間すら無かったのだから仕方ない。
「今年に入って、ファルージャがイスラム過激派組織に占拠されたんだ。市民は暴政に晒されるわ、イラク治安部隊は統率が取れないわで混乱してる」
戸和のくれた情報にへえと感心するも。
冷静に考えれば自分と同様の仕事量をこなしながら、一体君は何処に新聞を読む隙間があったというのだろう。
「隣のシリアもずっと紛争状態だしな…というかあれは最早大国の代理戦争か」
「まあ、つまり例にない緊張状態だって話だ」
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