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chapter.1-19

お前こそ冷静になってシャツを買う店から考え直してくれ。 牧は言いたい件がごまんとあったが、何やら先手を打ってインカムから声が流れる。 『俺は間宮の意見を支持するぜ』 「…この声は童貞か」 どうせまた席から監視カメラを覗いていたに違いない。 実はいつ海堂が騒ぎ出すか気を揉んでいたが、このタイミングで痺れを切らすとは。 『巨大な胸には巨大な夢が詰まっている』 「お前、そんな事言ってあれがシリコンだったらどうすんだよ」 『あれはシリコンではない』 「はあ?…モノホン触ったこともない奴が何を」 『純潔を極めて特殊スキルが開花したんだ』 メインルームがざわざわと不要なざわめきに満ちる。 さて、この妙な空気は神崎へ抗う革命なのか。否、それとも単なる脂肪への執着心が招いた一体感なのか。 「何だお前ら!要するに何が言いたいんだ!」 「いいか牧!俺はこのまま彼女が社長になって、あわよくば個人的な面談が発生しても良いとすら思っている!」 「黙れドンペリ野郎!歌舞伎町に帰っておっパブのキャッチでもしてろ!」 わあ懐かしいこの応酬。 久方振りに同年代の喧嘩を前に、萱島は場違いにほのぼのとした感想を抱く。 戸和は戸和で相変わらず無関心にPCを叩き、ひとり情報収集を再開しようとしたが。 「…牧、メールが来たぞ」 ぴたりと掴み合いをやめた責任者が振り返る。 そうして画面へ駆け寄り、身を屈めて青年の背後よりメーラーを覗き込んだ。 『R.I.C 責任者各位 お世話になっております。トワイライト・ポータルのジル・クリステンソンです。 本日は突然の訪問にも関わらず、貴重なお時間を割いて頂きまして有難う御座いました。 さて掲題の件ですが、明日より早速個人面談にお伺い致します。 尽きましては急で恐れ入りますが、お1人様30分ほど時間を確保頂きますようお願い申し上げます。 ご質問が御座いましたら、私宛に何なりとご連絡下さいませ。 今後とも、何卒宜しくお願い致します。 ---------------------------- Jill Christenson Twilight Portal, Inc. Tell: 090-xxxx-xxxx… 』

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