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chapter.1-20
「あ…明日ぁ…ん?」
眉を八の字に下げた牧が悲鳴を漏らす。
未だ寝屋川隊長も戻らず、作業すら逼迫状態なのに。
キーボードの上で手を拱 く牧の背後、今度は上司よりメールを受けた萱島が口を開いた。
「…“すみませんが暫く帰れません、何かあれば連絡して下さい。本郷”」
一帯の人間がお通夜の様な顔を見合わせる。
何かあればも何も、事件は現在進行形で起きているのだが。
『――おはよう御座います、5月31日朝礼始めます。本日スポット納品が12件、当月の売上は目標値+120%で達成の見通し…』
一夜明けて月末を迎えたR.I.C本部。
萱島ははっと牧の声に覚醒し、夢うつつから引き戻される。
当たり前の話だが、寝て起きれば朝が来てしまった。
結局あれから話も進まず、成果と言えばオッパイ党の反乱をやや宥めた程度だ。
『尚、既にメールを転送しておりますが…本日1人30分程度面接を行います。恐らく通常の評価面接等と変わりない内容かとは思いますが、君たち…良いですか、決して目の前の女性の胸ばっかり、胸ばっかり見ないよう…――』
「沙南、履歴書何処に移したか覚えてるか?」
「あ、えっと…資料室の」
戸和の声へ弾かれる様に立ち上がる。
ラックから鍵を出そうとして、萱島ははたと動きを止めていた。
「何?」
「…会社で名前呼ばないでよ」
「はあ?」
本当に分からん、と言った面で聞き返す。
委縮するかと思いきや、珍しくも萱島は威嚇する如く睨みを利かせた。
「呼、ば、な、い、で!」
「何を今更…」
『社員番号順に呼びます、凡そのタイムスケジュールは今情報共有システムに送りましたが…何か都合悪い馬鹿はさっさと俺に申し出なさい』
そうこうしている間にも背景で話は進む。
萱島は耳元も赤いまま相手を押し退け、自ら履歴書を取りに向かうべく駆け出した。
(近い近い)
幾ら籍を入れようが、時間を跨ごうが慣れないものは慣れない。
(さ…さわりたくなる)
厭らしい自分の思考へまた頬を押さえる。
お願いだから、職場でこれ以上理性を乱さないで頂きたかった。
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