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chapter.1-23

「随分情熱的な恋人ですねえ」 詰る男の言葉と目が痛い。 否、どうしてこんなにプライベートを暴かれる必要があろうか。 羞恥に泣き出しそうな萱島を前に、ジルはあちらへこちらへ執拗な視線を這わせている。 「しかしありませんね、完全に消せるなんて事もないでしょうに」 ひたりと腹へ触れられ、今度こそ萱島の全身が総毛だつ。 「あ、あのう」 只々涙目で男の腕を退けようとした。 萱島の可哀想な様相へ、蛇の如き目が留まる。 「もう良いんじゃないでしょうか…」 「…もう?何も解決してませんよ、何か嘘を吐く理由があったんでしょう」 いっそこれは、真実を話すのが最良の逃げ道でないだろうか。 お次は無遠慮に顎を掴まれ、覗き込まれる恐怖へ身が竦む。 「そうですね、では別室で…」 「…?」 「全身調べましょうかね、本当は何処に傷があるのか」 明らかに欲を孕んだ色にも気付かず、ただ手も足も出ず固まった。 満足そうなジルが凍る肩を掴む。 そうして痩身を促そうとした矢先、 俄かに銃の撃発音が轟き、鼻の真横を鉛玉が突き抜けた。 「うっ!」 仰天した図体が飛び退く。 当該物は柱へ埋まり、破片と罅を巻き散らした。 「…殺す」 いつの間にやら蔓延する殺気を振り向けば、死刑宣告と共に青年が銃を向けている。 「き…君は副支店長の」 「5M以上離れろ、そして死んで詫びろ」 姿を認めた萱島が青ざめた。 危局、今度こそ彼のハイドラショック弾で死人が出てしまう。 真昼間から血みどろ展開は勘弁して欲しい。 萱島は間髪入れず狙う2発目を遮り、全速力で青年へと駆け寄った。 「…違う!和泉!て、天才外科医が!」 「はあ…?」 「成る程、GMの読み通りデキてたんですね貴方たち…しかし話も聞かず発砲してくるとはなんと野蛮な」 汗の浮いた指でメガネを押し上げる。 話を聞かずも何も、邪な目的で連れ去ろうとしたのは事実である。

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