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chapter.1-24
「ふん…仲が良いのは結構ですが、貴方が嘘を吐いたと判明すればどうなるか」
「…何でそこまで知りたいんですか?」
戸和の袖口を掴んだまま、萱島はおずおずと口を開いた。
面談の後まで態々追ってくるなんて妙じゃないか。まるでそれが、本当の用件であったかの様に。
「何でって、お互いの事を知らなさ過ぎるでしょう?私たちは」
「それならそっちだって…」
「おやもう次の面接の方がいらっしゃいますね」
白々しく腕時計を見やる男が後退する。
「今の暴力に関しては、不問にして差し上げますよ」
そうして見事に自分は棚へ上げ、ジル・クリステンソンは踵を返していた。
ブチ切れそうな戸和がまた照準を向けるも、先手を取って腕を掴む。
「邪魔するな…お前、さっきあの変態と何してた?」
「なんか、面接の内容というか」
「何でシャツの前が乱れてる、触られたんじゃないだろうな」
此方にまで射殺しそうな目を向ける、腹を触られたなどと言えば今度こそ後ろから頭を吹き飛ばしそうな勢いだった。
ジルの所為でない汗をダラダラと流す。
萱島は暫し答えあぐねていたが、はっとして矢庭に話題を転換した。
「和泉、普通職場の面接で手術歴なんか聞かないよね?」
「…聞かない」
未だ不服そうながらも、相手の服装を直してやる青年は些か落ち着いたらしい。
「間宮や佐瀬も聞かれたって言ってたな、妙な話だ…もしそれが神崎社長と関係があるとしたら」
さらりと長い指が前髪を払う。
擽ったそうな身を支え、今日もキラキラした飴玉をじっと見た。
「捜してるのはお前」
「…へ?」
「の右目」
瞬きを繰り返しつつ、漸く萱島の回路が言わんとするところへ追いつく。
「…何で今更?」
「知らん、俺だって仮定で喋ってる。ただ狙われても面倒だから、お前は此処に居ない方が良い」
さっと周囲を見回す戸和を伺う。
今後の身の上を話されようが、余りにも繋がりの見えない話に浮遊感が付き纏う。
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