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chapter.1-25

「面談終わった?」 はっと面を上げた両者が振り返る。 長い廊下の向こうからは、怠そうに首を押さえた牧がやって来た。 「…ああ」 「あんまり此処で長話はやめろな、マナーも品性も知らん連中だからさ」 盗聴の可能性を揶揄しているのだろう。珍しく眉を寄せる牧に、萱島は先ほど男の消えた方角を覗き込んだ。 これでは余りに動き辛い、どころか連中の言うままに従う状況は如何なものか。 「…もう無理にでもご退去頂いた方が」 「も、考えましたが連中のバックが面倒臭い。こっちが駄々こねたら次は武力衝突だ。おまけに副社長も別所で動いてるなら、此方が破綻すれば向こうもやり辛くなる」 反論へぐうの音も出ず押し黙る、萱島の手前、何を思ったか牧は徐に追い払うかの如く手を払った。 「…でまあ、貴方はもう戸和くんと出ていきなさい」 「えっ」 「此処に居ても動けんし、社長のこと心配なんでしょ」 完全に虚を突かれた上司は、間抜けな面でパチパチと瞬きを繰り返す。 「俺も一応心配はしてますから、捜しに行くならさっさと行きなさい。戸和もなんか、目星ついてんじゃないの」 「…目星って程でもないが、確かに調べたい件ならある」 「なら十分だからもう行っといで、派遣調査隊にも連絡付いてんだから」 さあ、此処まで牧に押し切られるなんて何時振りだろう。 普段は機転からサポートに回り、緩衝材に終始していたと言うのに。 早々に理解して了承する戸和を他所に、未だ後ろ髪を引かれる。 萱島は半身で振り返りながら、聡明な青年へ目で縋った。 「な、何かあったら連絡…」 ぺしっ。 額に衝撃を受けて目を白黒させる。 伺えばいつもの無邪気な笑みを湛えた牧が、デコピンを加えた手で挨拶を寄越していた。 「承知してます萱島“主任”」 その表情へ無用な懸念を吸い取られる。 もう口を閉ざした萱島は、戸和へ腕を引かれるままに廊下を後にしていた。

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