26 / 248
chapter.1-26
『――牧、面談お前の番だぞ』
2つのシルエットを見送る中、インカムへ業務連絡が入る。
簡素な受け答えのち、牧は億劫な足取りを会議室へと急かした。
さて、実は戸和の身元や何やかんや…襲撃の真相に至るまで、ざっくり搔い摘んだところは社長から聞いている。
諸々の接点から今回の件に絡んでいるとして、気になるのは大別して3点だ。
1、目的。何故10年以上前の故人を追い掛け、中東くんだりから日本までやって来たのか。
2、情報源(ソース)。何故だか移植を受けた対象までは特定出来ておらず、中途半端な情報量である。一体誰からそれを受け取ったのか、限られた繋がりを洗えば目的へ帰結出来る気もするが。
3、正体。これは目的の解明とほぼ同義かもしれない。少なくとも唯の商社では無さそうだし、先に見た武装勢力との繋がりも気になる。
(中東と言えば…滞在してたのは寝屋川隊長か。だが彼を捜している訳でも無さそうだし)
おまけにこの窮地に居なくなり、詳細すら寄越さない本郷。
連絡は出来る状況にも関わらず一切を話さないのは、意図的にそうしたのか、それとも誰かの圧力が働いてのことなのか。
(確か社長の友人に会いに行くって言ってたよな)
どうもその方面がきな臭そうだが、萱島らは其方へ向かったのか。
あれこれ考え込んでいる内に、いつの間にか目前には会議室が迫っていた。
「牧主任ですね、どうぞ中へ」
「…あ、ハイ」
欧米人の巨体に圧されつつもドアをノックする。
返答にノブを回せば、会議室には想定以上の人員が待機していた。
「――いらっしゃい牧、どうぞお掛けになって」
今日も今日とて存在感凄まじい、中央に座したカレン・デリンジャーが促す。
牧が黙って対岸に掛けるや、彼女は申し訳程度に履歴書を眺めながら口を開いた。
「突然無理を言ってごめんなさいね、こっちも色々立て込んでて…簡単な確認だけだから、そう固くならないで頂戴」
室内にはカレン、補佐のジル、プラス5名。
記録係と後は何の要員か、密かに視線を走らせた牧は片眉を上げた。
ともだちにシェアしよう!