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chapter.1-27
(コイツら武装してやがる)
スーツに隠していようが、不自然な皺が物語る。
商談に武器持ちなど無粋極まりなく、端から主導権を握るつもりだったのか。
「システム系全部作ってるって本当?」
「…ああいえ、基幹システムはそうですが勿論外注もしてまして」
この場に態々居合わせるなら、全員使いっ走りという身分でもないのだろう。
話を持ち掛けるなら今か。
だが、表立ってやるのは馬鹿げていた。
「それでも助かるわ、うちってITエンジニアが不足してるのよ」
「最近は何処もそうでしょうね」
交渉事が多対一で有利な筈がない。
仕掛けるなら一人を選定すべきだ。この場に居る中から、扱いの簡単そうな生贄を一人。
(…このGMは先ず除外)
そして傍を離れないメガネも除外。
さあ残りの5人に何か接触したいが、今の状況では余りに唐突過ぎる。
(しゃーねーなあ…)
牧の目がちらりと対岸の女性を見やった。
(俺、あんまこういうの柄じゃないんだけどな)
二次元ならいざ知らず。
数秒明後日へ視線を逸らした後、咳払いして身を乗り出した。
「ところでMs.デリンジャー」
「カレンで良いって言わなかった?」
「失礼、カレン。この後のご予定は」
「面談が終われば引き上げるけど…あら何、もしかして誘ってるの?」
ふっとルージュへ角度が生まれる。
同時に室内の空気がささくれ立つの感じ、牧は内心拍手喝采したくなった。
(モテモテだなこの峰〇二子)
「今の面談だけじゃご不満かしら」
「ええ、二人きりが良いですね」
にこりと口だけで愛嬌を出す。こういう女性は直球に限る。
想定通りカレンは首を傾け、些か含みを抱いた目つきへ変わった。
「…ふうん、意外。可愛いのね」
そして良いわよ、と二つ返事を投げる。
彼女の様を見兼ねたのか、俄かに背後の男が声を荒げていた。
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