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chapter.2-3

「来てくれたのかスティーブ…!」 「まあな、だが未だ俺は提案を承諾した訳じゃない」 破顔して席を立つ千葉を他所に、イタリアンスーツを決めた彼はシビアだ。 幾ら親睦を深めようが、出来るやつほど公私は分けている。 「いいや、お前は確実に乗ると思うぜ」 「何を根拠に…」 「作戦が順当に行けば、あのボディコン姉ちゃんの自宅まで覗ける…そういう話であってるな牧?」 「合ってるけど、お前ボディコンなんて言葉良く出てきたな」 どうせ普段付き合う人間の影響だろうが、バブルの風甚だしい。 呆れる牧を他所に、当のスティーブは無愛想な面を一気に曇らせた。 「電話帳!メールの履歴!画像フォルダ!お前は残らず彼女の秘密を入手でき…」 「ばっ、ばか野郎!そそそんな程度で俺が食いつくと思ったか!?」 「突っ込むべきはそこじゃないだろう」 「気持ち悪いなこのむっつりマッシュルーム」 ヒートアップする両者の背後、理系二人が外野から冷水を浴びせる。 今になって思い出した。 千葉くんと仲良くなる輩は、大概1、2本大事な回路が切れていた。 「ふん…その反応は想定済みだ。いいか保存データだけじゃない、カメラをジャックしたらお前…部屋とかトイレとか盗撮出来るんだぞ」 「馬鹿な…!!」 スティーブが膝から崩れ落ちる。 牧と渉の目が、感情もなく地面へ突っ伏す彼を追い掛けた。 「GMのあんなところやそんなところまで見えてしまうと言うのか…!!」 「おい、コイツ計画に入れるのやめようぜ」 「…ああそうだスティーブ。彼女が一人部屋に帰り、漸く堅苦しいスーツを脱ぎ捨てた時…お前の目の前には、2つのデカメロン伝説が…!」 「デカメロン伝説はそんな下ネタ的な意味じゃないよ」 悲しいかな、牧の声はもう届いていないらしいが。 千葉の近年稀に見る低俗な語彙の方は刺さったらしく、スティーブは蹌踉と膝を突いて起き上がった。

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