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chapter.2-4
「…くっ、この変態技術大国め…俺の負けだ」
「やってくれるか!?スティーブ」
「まあ仕方ねえ、そのルーターを貸しやがれ」
渉が酷く嫌そうにものを寄越す。
何も仕方なくは無かったが、一先ず交渉の成立には安堵した。
「GMは午後には此方にいらっしゃる、決行するなら早い方が良いんだろう」
「ああ助かる…誘導前のワンコールを宜しく頼んだぞ」
牧が要点だけ告げるや、何故か満身創痍の青年が頷く。
彼はそのまま苦虫を嚙み潰したような面で、彼方此方へぶつかりながら来た道を戻っていった。
「…おい千葉、いいのかよあんな奴に頼んで!」
「心配すんな、約束は守る男だからよ」
「しかし当てが外れたな。まさか社員の癖に事務所の位置も知らないとは」
こんな面倒な協力を頼む羽目になったのも理由は一つ。
スティーブがほぼまったくと言って良いほど社の事情を知らなかった為だ。
彼曰く、勿論日本にも簡易的なTP(トワイライト・ポータル)の事務所は設けてある。
然れどそれは恐らくハリボテで、幹部が根城にする場所は他にあるというのだ。
事務所の位置すら知らされていないのでは、目的など知る由もない。
恐らく色々分かっているであろう人間は、カレン等ほんの一握りの中枢なのだろう。
「…頼んだぜスティーブ」
彼が上司を前にして、忠誠心に傾くことも有り得る。
そのまま計画をバラされでもしたら、いよいよ此方の立場は崖っぷちであった。
「カレン、こんな所にいらっしゃったんですか」
未だ年若い部下の声へ面を上げる。
R.I.Cの休憩所で携帯を手にしていたカレンは、その珍しい人物へ笑みを作った。
「…あらどうしたの?何か用事?」
「えっ、いえ…その…」
しどろもどろな態度を待てば、スティーブは咳払いを挟み、幾分落ち着いた声で提案を寄越した。
「申し訳ないのですが…少し場所を変えても宜しいですか」
何処か真剣な様相へ動きが止まる。
無論この青年が自分に好意を抱いている事など、敏い上司は芽が生える前から理解していたのだから。
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