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chapter.2-7
「…よし完了、俺はアプリとログの掃除に入るからデータは好きにしなよ」
「サンキュー渉、文化勲章だお前は」
少年の投げたUSBを受け取り、牧はオフラインで展開を始めた。
目当てが見つかるかは賭けだが、このデータだけは死んでも隠さねばならない。
(取り敢えずアドレス帳の番号はすべて調べるか…それから送受信メール、アクセスサイトのログ…)
正直多人数で作業に当たりたい。ただこれ以上情報を拡散する訳にもいかない。
片っ端から受信メールを確認しつつ、背後でソフトによる解析処理を進める。
幾つか文面を流し終えた、牧はある懸念を募らせ指を止めていた。
(…この携帯じゃない)
彼女が本部と連絡を取っていたのは、この携帯でない。
恐らく此方はスティーブらと連絡を取る、“当たり障りのない”通信機。
そして機密事項を飛ばすのは、別に隠したもう1台の通信機。
その使い分けは果たして必要なものなのか。ともすれば、端から外部のハッキングを警戒して用意していたかのような…
「――…き、牧!」
はっとして思考を現実へ戻す。
声の元を向けば、血相を変えた渉が身を乗り出していた。
「あの女が来る」
弾かれた様に監視映像へ詰め寄る。
忠告通り、液晶には廊下を真っ直ぐにやって来るカレン・デリンジャーが映っていた。
「何だアイツ…此方の居場所が分かってんのか?」
「…迂闊だった渉」
珍しい苦悶を浮かべ、牧がPCのディスプレイを睨み付ける。
「此方の通信機は防御していたが、スティーブの携帯までは未警戒だった。俺達の会話も、奴の携帯を通じて盗聴されてたかもな」
「…嘘だろ?」
彼は意図せぬ二重スパイになっていたとでもいうのか。
動揺は拭えぬまま、一先ず牧はPC内のデータを削除し、USBを上着へ隠し持つ。
次いでどうにか渉のログ削除が追いついた頃、執務室には来訪を告げるノックが響いていた。
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