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chapter.2-9
「社長が見つかるまでは契約を止める…そういう話だった」
「貴方たちがもう少しお利口にしてればね、また鼠を入れられたんじゃたまらないわ」
ただこの場で恐喝されようが、此方には何も話す件など無かった。
寧ろ多少でも情報があるなら、ご教示願いたいくらいだ。
「君は良い子ね…渉、本当は社長とお話し出来るんじゃない?今もみんなで示し合わせて隠れてるのかしら」
「渉だって何も知らない、銃を下ろしてくれ」
「貴方でも良いのよ牧、今すぐ連絡して神崎社長を呼び出して」
連絡を取りたいのはこっちだ。
社員が危険に晒されている中、あの男は一体全体何処で何をしている。
「――…ドアが開いていたので失礼しますよ」
そして膠着した場へもう一人現れた。
意表を突かれた牧は、動揺から機敏に入り口を振り向く。
「GM、どうも彼らも事情を把握していないのでは」
ジル・クリステンソン。
副官の登場へ焦る間もなく、牧の目は男が引き摺るものへ吸い寄せられた。
「…スティーブ!」
「類は何とやら。スクラップ同士は良くくっつくようですな」
「ちょっと、どうしてそんなに怪我してるの」
「近頃のガキは口が堅くてね」
解放されたスティーブは膝を折り、その場に満身創痍で崩れ落ちる。
暴行されたのか。
立場が危うくなるのは双方承知の上だったが、此処まで露骨な制裁がくるとは。
幸い大事には至らないも、如何な墓場へ流されるだろう。
「…馬鹿な子」
吐き捨てたカレンへ、虚ろな目が上がる。
「私を止めようとしたの?惚れた腫れただけなら、もっと安い方法があった筈よ」
「カレン、スティーブの処遇はさて置き…一先ず2人を人質に責任者を呼び戻しましょう」
進む会話の傍ら、銃口は未だ渉に向けられたままだ。
おまけに此処へ来て加勢が到着し、じりじりと此方との距離を詰めている。
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