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chapter.2-10
「あの支部長はどうも怪しい…面接での問答も大事を隠していた様ですよ」
「嘘は困るわね。じゃあ呼んで貰おうかしら、牧」
カレンがPC前のデスクへ腰を下ろす。
その動作を追いながら、ふと牧は監視映像の変化を捉えていた。
「着いたら貴方たち全員拘束させて貰うわ。通信機器も没収…それで渉くん、君はこっちに」
アス比の可笑しな廊下、幾つかエントランスを後に黒い影が過ぎる。
俊敏ながら統制の敷かれた動き。その正体を知るや、牧の相好へみるみる光が戻っていた。
帰って来たのだ、この最高の土壇場で。
「そんな顔しないで…上司に思いやりがあれば身体が泣き別れる事はないの。私たちと一緒」
敵は気付かぬ背後、狼の群れが息を殺し迫っている。
徐々に強まる、廊下を抉る爪音、硬質な殺気。
「貴方は早く電話を」
カレンが顔を上げた先、牧の反応は無かった。
それどころか微笑を湛えるや、出し抜けに歓迎を零していた。
「…お帰りなさい」
何を突然、そんな顔でもって。
凍り付くカレンの傍ら、足音を拾ったジルが声を張り上げた。
「カレン!!来ました連中…!」
「――Don't move!!Drop the gun and put your hands up!!」
突然の怒号、ドアが吹き飛ぶ勢いで全開する。
2人が怯む隙を見逃さず、牧はカレンの銃を蹴り渉を奪い返していた。
「「――Hold up!put your hands up!!」」
「Aw, shucks…!」
ジルが屈辱に歯を剥き出す。
気付けば室内にはクロスオーバーで隊員が流れ込み、四方八方からHK416を向けている。
「…派遣調査員の犬め!!」
度し難いタイミングの悪さだ。
R.I.Cの武装勢力にこの場を見られたのでは、もう敵化する他ない。
否応なく武器を投げ捨てた直後、ジルは背後から一瞬で地面へ沈められた。
見上げた視界には、2Mはあろう巨漢の黒人が此方へ圧しかかっていた。
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