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chapter.2-13
「…寝屋川隊長!」
カレンらが一先ず連行されたのち、牧は帰還した上司の傍へと走り寄った。
「怪我無いか」
「はい、お陰様で…」
「遅くなって悪かった」
その変わらぬ存在感へ安堵するも、課題は山積みだった。
拘束した責任者両名に加え、一旦病院へ搬送したスティーブ。
彼らの価値が如何ほどかは知らないが、無論TPが此方に報復を加える事も有り得る。
早々に必要事項を聞き出し、風上から先手を打つ必要があった。
「御用事は大丈夫だったんですか?」
「ああ問題ない、こっちもイラクの件でな。現地で活動してるPMC(民間軍事会社)へ説教垂れてただけだ」
イラクと一口に言えど地図は広い。
そのPMCへ問うてみたところで、ひとつの民間企業の名前など引っ掛かりはしないだろう。
「今年の情勢は最悪らしい。現地の治安部隊が役に立たん窮状、入国ビザは当分発行されねえだろうな」
「TP本部へのコンタクトは難しいと」
「そうだ、現状あの2人から取れる物を取るしかない。後は…」
其処で一旦、確認する様にスマホへ目を落とす。
目当ての着信は無かったらしい、寝屋川は半ば呆れて問うていた。
「義世は何処に行った?沙南と和泉は」
「あー…その、全員社長を捜しに」
「当てもなくか?」
まあ凡そその通りで。
単に居ても立っても居られなかったというだけに始まるが。
「あ、副社長はそう言えばご友人に会いに行くと一言」
「…成る程、それで?」
「そのまま転職すると言って帰って来なくなりました」
改めて文字に起こしても意味不明だ。
然れど何やら思案した上司は、合点がいった風に相槌をくれていた。
「All right、アタリを引いたか。連絡がねえなら良い便りだろう」
「はあ、うん?…そう…?」
結局何も消化は出来ぬまま、会話が幕を引く。
アタリを引いたとは、即ち何かしら前進したという事なのだろうが。
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