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chapter.2-14

*** 殺伐とした界隈であるからこそ、この昼時は格別の報酬だ。 大仰なゲートの手前、今日も入館処理担当の警備は陽射しに微睡む。 今からランチ休憩に入れば、麓のサンドイッチセールへ間に合う。 水曜日はターキーサンドが狙い目だ。 ところが急げとばかりに電話を持ったタイミング、男は運悪く来訪のベルに引き留められていた。 「…Can you show me your work pass?(社員証をどうぞ)」 スケジュールを崩され、不機嫌を隠しもせず手を伸ばす。 「Nothing」 「ゲストの方ですか?アポイントメントは御座いますか」 「社員証なら君に預けた」 ふと覚えのある声が挙動を止めた。 防弾硝子越しに姿を見上げ、警備は5M先まで椅子を突き飛ばし起立していた。 「み…御坂本部長…!!」 額が硝子へ衝突するも、痛みすら湧かない。 衝撃に立ち尽くした次には、男の目から感動に水が溢れ始めている。 「君、今頭ぶつけなかった?大丈夫?」 「おお神よ…私はもう定年まで貴方様には会えないものかと…!」 「還暦も先なのにどうしたの」 矢庭に号泣する男を往なしつつ、手続きは隣の警備と済ませる。 凡そ7年ぶりに相対した感動は収まる事を知らず、彼は到頭デスクに突っ伏して咽び泣き始めた。 「…お帰りなさいませ本部長。ジョセフもこんなに喜んでいます」 「有り難う。戦争間際まで家を空けてしまった」 会話の傍ら、奥から現れた警備が恭しく金庫の中身を広げる。 当人より預かっていた携帯電話、銃、その他貴重品の類をカウンターへ並べ、不足ないか問おうとした頃合いだった。 「――Sir!!」 今度はゲート手前まで突っ込んだ車が開き、俄かに絶叫が轟く。 「私は…お帰りになる際は、連絡をと、あれ程申し上げました!!」 その声量へ思わず警備が顔を顰めた。 後目で捉えたエントランスには、酷い形相と苦言を携えた御坂の副官が駆け込んでいた。

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