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chapter.2-17
「下界の事情を理解されましたら、早々と指針を提示して下さい。私たちは何事もファクトベースでしか申し上げられません、未来を断言出来るのは貴方の特権です」
「良くも断言などと使ってくれたな。君の家の死んだ魚は知らないが、三次大戦は延期させてやる。一先ず経済制裁は来年にしろと言え」
「承知…連中が貴方を煩わせるならば、次は撃ち殺しましょう」
物騒な文句で締め括った頃、2人を乗せたエレベーターが目的地へ行き着く。
サイファは勇んで廊下を先導したものの、矢先に現れた人間と衝突事故を起こしていた。
「ぶっ」
「何だお前?サイファか…おっ、本部長お帰りですか。相変わらずの凛々しい目つ…」
「通り道を塞ぐなマチェーテ…!」
軽妙な口調を遮り、サイファが金切り声を上げる。
然れど取り合う素振りもなく、背の高い彼は目当ての上司へ書類を手渡した。
「頼まれた資料ですどうぞ、日本はもう大丈夫なんですか?」
「ん?そうだね、大丈夫なんじゃない?」
何やら可笑しそうに笑みを零す。
その穏やかな返答へ誤魔化される間に、姿は早々と廊下の奥へ遠ざかってしまった。
「…なんかあの人偶にお父さんみたいな顔すんな」
「おいゴミ野…マチェーテ!サーに何を頼まれた!」
「何ってトワイライト・ポータルの調査報告書だ」
はん、矢張りその件か。
予想の範囲内というドヤ顔を保ち、サイファは鼻を鳴らす。
「雑用ご苦労だが、今後サーに関わる件はすべて私に報告しろ」
「今年も人生謳歌してて何よりだ。まあ俺達がサメに喰われんでも、もう詰まらんB級映画は終いってことだな」
「終い…?」
聞き捨てならないサイファが食いつく。
その言い草、まるでこの男が自分を越して顛末を見通している様じゃないか。
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