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chapter.2-18

「うちの覇王様は既に向こうの思惑まで視えてるんだろうよ」 事も無げに吐く相手へ黙った。 仮に上司が大筋を掴んでいるなら、補佐官に教えない意図は何だ。 そんなものはまるで、自分が戦力外として端から見限られているような。 「――…サー!」 執務室の扉を弾き飛ばす。 礼儀を欠いた部下の所作も構わず、御坂はマチェーテの資料を捲った。 「連中の目的を知っているんですか?何故私には何も…」 関せず次々と字面を見送る上司へ怯む。 何年経とうがこれだ。天上人の如き存在へ、凡人は最低限の講釈を待つ他ない。 「私はご不要ですか?」 「そんな顔しないの」 睨みを利かせて糾弾すれば、動かぬ相手が声だけを寄越す。 「一から十まで私の思考を伝えていたら、お前がパンクしてしまうよ」 それはその通りだ。 だが目下のメインイベントなら、蚊帳の外は我慢ならない。 「ですが」 「君を蔑ろにしているなら、数年も一国に感けて消えない。そもそもUNSCにこの建物自体奪掠されているかと思えば、よもや多少の財政難だけで五臓六腑保ってるとは」 いつもの淀みない口調を耳に、サイファは唇を噛む。 これは此方の怒りの根底を察し、数年間穴を開けたフォローをくれている。 「“良くやった”という報酬以外にも、君は休息を貰う権利があるんだよ」 仕事をしたなら、同時に休めという話らしい。 漸く振り向いた上司の子供をあやす様な目に、サイファはついマチェーテの戯れ言を想起していた。 “偶にお父さんみたいな顔すんな” 訂正を加えると、偶に、ではない。 なかなか頻繁に、我が家の総帥は父親の様な顔をしている。 「…Sir…私は未だ“良くやった”等と言われてません」 「そう、頭でも撫でてあげようか」 「はい!!!是非!!!」 机に突っ込む勢いで滑り込む。サイファを放ったらかし、上司は何やら固定電話を手繰り寄せ電話をかけ始めていた。

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