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chapter.2-20

「サイファ、マチェーテ。動機と経緯は知らんが、連中の目的は分かった」 「は…」 どうやら今の電話は唯の確認だったらしい。 予期せぬコンタクトで、相手の反応を引き出したのか。 「“箱舟”だ」 困惑していた2人の目つきが変わった。 事態の深刻さを悟り、一気に凍てついたものになる。 「…Sir、それは最上位の機密事項です。我々でも一部しか携わらない計画を、何故民間人が知り得たというのです」 「ソースの出所を考えれば予測は付くが…サイファ」 出し抜けに呼ばれた当人が顔を上げる。 「本郷君はちゃんと送ってきた?」 「え、ああ勿論です…顔までは割れていない故、偽名と偽造身分証で対応を依頼していますが…」 きっと針の筵であろう。 現在の境遇を想像したサイファは、一寸遠い目で彼の無事を願う。 「まあ、彼なら上手くやれるでしょう。誰かさんのご子息と違って、協調性の塊みたいな人間なので」 「――Attention!!」 野太い号令に姿勢を正す。 土地柄どうも埃っぽいオフィスビルの一室、本郷は居心地悪くタイルの目を数えた。 「今日から事務に新しいメンバーを迎える、スズキ…ロ、リョキ…」 英語圏の人間には長音や諸々が難しい。亮貴なんて偽名、よせば良かったのに。 「…ロウだ!みんな色々教えてやるように」 結果いい感じに略された渾名を聞き、社員が疎らな拍手を送る。 これで全員なのか、人数は100名未満。国籍はほぼ欧米圏が占め、女性も2割ほど見受けられた。 「彼どうしたんだ?こんな僻地にくるなんて、母国で指名手配でもされたのか?」 「どうも取引先の紹介らしいぜ」 「beautiful…」 勝手多様な雑談を他所に、本郷は己のプロフィール復唱へ励む。 何なら一端でもボロを出せば終いだ。 自分は中東へ知人の紹介で現れた日本人、それ以上でもそれ以下でもないのだから。

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