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chapter.2-22

「ところで貴方のそれって容認発音(RP)よね?金持ちなの?」 「いや別に。普通の生まれ」 「ふーん、あ…こっちの自己紹介が未だだっけ」 愛嬌に富む上、表情の良く変わる子だ。 面白そうに見守る手前、少女は作業の手を止め握手を所望する。 「私はパトリシア、これから宜しく」 「パ…パトリシア!?」 思わず掴んだ空箱を放り出していた。 そのオーバーリアクションが解せず、相手も友好を引っ込め眉を寄せる。 「何なのよさっきから…そんな珍しい名前?」 「や、そうだよな…良くある名前だよな、単に偶然が重なったって事も」 しかしその髪色、瞳の色、此処まで似るものか。 おまけに現在までの経緯を顧みると、どうしても一切無関係の他人とは。 「パトリシア」 思考に気を取られ反応が遅れた。 本郷はいつの間にやら現れた第三者へ、驚いて面を引き上げた。 「…セフィロス様!」 「もう新入社員と仲良くなったのか?良い事だな」 「そ、そんな…」 セフィロス。 つまりこの男がトワイライト・ポータルの統括者、神崎を狙う首謀者という訳か。 年は30中頃だろうか。 想像より年若い相貌を前に、本郷は一先ずその人となりを測ろうとする。 「初めまして本郷君、CEOのセフィロスだ。君には期待しているよ」 「…有難う御座います」 自信に満ち溢れた表情ながら、何処かズレたセンスのスーツ一式。 腕時計は露骨なブランド物に関わらず、足元は疎かな量産品だ。 (37点) 真顔で失礼な評価を付けている間にも、隣の少女は嬉々と彼に話し掛ける。 「セフィロス様がいらっしゃるなんて珍しいですね、何かご用事ですか?」 「ああ、人も増えたしミーティングをね。これからはもう少し顔を出す様にするよ」 彼女のアプローチに気づいているのかいないのか。 当たり障り無いやり取りで退いたセフィロスは、結局軽い挨拶のみで両者の視界から消えていた。

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