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chapter.2-23

「…どーお?格好いいでしょ?ウチの社長」 「え、うん」 突飛な質問でつい雑に答えてしまった。 その淡泊さにも構わず、パトリシアは聞いてもいない付加情報をつらつらと並べている。 「女の子に無茶言わないしー、私の事も気遣ってくれるし…すっごい紳士なのに、超モテるのよね。まあ分かるけど」 「いや、アイツ多分(vir)…」 うっかり少女の夢を壊しかけた大人が黙った。 「…vir…なあに?」 「何でもない。それよりこれ何処に運べば良いんだ」 「ストックだけ残して後は倉庫よ、でもほんとに何で貴方こんな所に就職したわけ?此処が何の会社か知って…」 「おいパトリシア」 また邪魔が入った。 少女の背後には、今度は先に挨拶したマネージャーが仁王立ちしていた。 「新人に余計なことを喋らなくていい。彼は簡単な雑務や営業補佐だけだからな」 「分かってるわよ、ちょっとくらい仲良くしたって良いでしょ」 「フン…なら序に必要なものを街で揃えて来い」 鼻を鳴らして去る巨体を見送り、パトリシアが肩を竦める。 「買い物付き合ってやれってさ」 「買い物?まさかPCを一から揃えろって話じゃないよな」 「違うわよ、貴方のプライベートの買い物」 呆れた彼女の返しに虚を突かれた。 確かにそれは有り難いが、この会社がよもや社員の生活まで面倒を見ているとは。 「…言っとくけどね、外なんて一人で絶対出ないでよね。空港から来る時も、車から降りるなって言われたでしょ。此処は日本人がフラフラ出歩いていい国じゃないの」 「お前は良いのかよ」 「そうよ、理由は…まあ」 先を言い淀み、一寸周囲の視線を伺う。 パトリシアは嘆息して手の埃を払うや、ついて来いとばかりに荷物を放って歩き始めた。 「後で教えてあげる、今から街に行くから離れないでよね」

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