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chapter.2-26

「ねえこんな物で足りるわよね?」 「十分、有り難う」 荷物を彼女からすべて貰うや、店員の彼にも礼を告げて店を出る。 そうして階段を下り路面へ出た頃、パトリシアが痺れを切らした様に声を荒げていた。 「ちょっと…!さっきから気になってるんだけど、一々私の為にドア開けたり、段差の前で手出さなくて良いわよ!!」 「…何で?」 訳が分からん、とでも言いたげに返答が上擦る。 思春期特有の難しさか。憤る少女を前に、本郷は足取りを止めていた。 「気にすんなよ女の子なんだから」 「何それレディーファーストってやつ?…あーやだやだ貴方みたいな優男!私は昔から自分で出来ることはやってきたの、今更そんな扱い受けたって気…」 後方に下げた右足が段差で滑った。 思わずバランスを崩した矢先、咄嗟に伸びた腕が彼女の腰を支える。 「…、っ」 図らず間近になる。 虚を突かれて見上げる灰色を、本郷は好奇心から覗き込んでいた。 (同じだ) どう光を当てようが等しい、硝子細工のシルバーホワイト。 黙って見詰めていた最中、俄かに頬の痛みで我に返る。 「いいい、いつまで見てんのよ変態…!!」 確かに年頃の女性を不躾に見るべきでなかった。 全力の平手のち、パトリシアは赤面して走り去ってしまった。 「…マジかよ、美咲に殴られた気分だ」 姿也は違えど、丁度同い年くらいの娘を思い出す。 僅かに痺れる頬を押さつつ、本郷は自分を置き去った少女を追い掛けにかかった。 「おいパティ、パティって」 「馴れ馴れしく呼ぶんじゃないわよ…!」 「置いてくなよ、さっき教えてくれる筈だった話は?」 車を前に少女が振り返る。 未だ不満を抱えた様相ながら、彼女は一先ず乗れとばかりに箱を顎で促していた。

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