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chapter.3-3

「野蛮な話ね。実に原始的」 「自嘲というより、嘲笑だなsugar」 先から気付いていた。 カレンが主語を我々でなく、TPと置くことに。 「…だってGMの私はさっき貴方が殺したじゃない。今の私は唯の女、確かめてみる?」 「無駄口の多い奴め、九官鳥(hill myna)とでも呼んでやろうか」 「いやよ…もっと可愛いのにして」 空気が変わる。俄かに寝屋川の手首へ重みが加わる。 億劫に箇所を確かめれば、彼女の赤いネイルが上着へ食い込んでいた。 「ねえ、今度は私が質問する番よね」 「ああ」 「だったら貴方の心の闇を話して。上辺じゃなく、一番深い傷を」 端から妙な交換条件だった。 それが此処へ来て、更に明後日へ折れ曲がった。 自白の対価に何を要求するかと思えば、女が問うたのは寝屋川の個人情報だった。 それも誰が得するとも知れない、唯の包み隠した内情を。 「…私が貴方に何を喋ろうが、黙秘しようが、もうこの先の人生真っ暗なのよ。せめて貴方は私の為に話してよ」 カレン・デリンジャーを解放したとして、この先表の世界では生きていけまい。 そして、永久に政府の影に怯えて地下を走るのだろう。 「今だけで良いの、一緒に地獄に落ちて」 手を掴む力が強まる。 その目力を受け止め、寝屋川は器用に片眉を吊り上げていた。 「だから女は嫌いなんだ」 少々差別的な発言へ、カレンの目が不服を孕む。 「この期に及んで未だ腹を探るか、よくも懲りねえな」 「…私が嘘を吐いてるって言いたいのね」 「吐いてるさ。だが俺が女を苦手な理由は、嘘に真実を混ぜるからだ」 「真実?」 寝屋川の目が自分を掴む手へ走る。 其処で漸く指先の震えを自覚した、カレンはバツが悪そうに顔を曇らせていた。

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