73 / 248

chapter.3-13

『トワイライト・ポータル社に関する情報を求めています』 随分と端的な書き込みだが、それで良いのだろうか。 萱島が隣を覗けば、手持ち無沙汰になった相手が見返している。 「…眠そうだな」 「眠くないよ」 掲示板は放ったらかすとして、他にも存在するマーケットを知りたい。 その件を問おうとした先、隣から伸びた腕が肩を引き寄せた。 「おい」 殆ど耳元の声に固まれば、案の定追及が降ってくる。 「肩を抱いたくらいで赤面するな」 「…すいません」 ごもっともな指摘だが、この空気をどうしてくれよう。 生来の生真面目さから狼狽していると、視界でディスプレイの一部が様変わりした。 「はっ…!書き込み有難う御座います!」 物言いたげな視線を他所にラップトップを奪い取る。 急いで詳細を確認すれば、この短時間で3件ものレスが付いていた。 『Re.1 title:本社位置知りたい?』 その件は知っている。これは本文は見ずスルー。 『Re.2 title:あそこやばいよ』 どうも確かな情報が無さそうだ。加えて頭が弱そうなのでスルーする。 『Re.3 title:入場券を買うといい』 最後のレスには指が止まった。 入場券が比喩なのか何なのか、惑う横から戸和が本文を開いた。 『no name:連中が運営しているテーマパークがある。 入場券が必要だから、ここで買うといい』 下部にはご丁寧にURLまで貼ってある。 今だ頭は追いつかぬながら、2人は早々と次を求めてリンクを開いていた。 「…ネットオークションサイトだ。『フィッピーランドの入場券』…?最低落札価格は…$25000」 ちょいとゼロが多過ぎる。 目を白黒させている萱島の隣、戸和は数秒間考え込んで入札を押す。 「気にするな全部経費だ。10万ドルもあれば足りるだろ」 領収証に“お前を捜す費用”と書いて、後日社長に叩き付けるのか。 そもそも胡散臭い匂いがぷんぷんしたが、溺れる者は藁をもつかむ。結局あれよあれよという間に取引は進み、数時間後にはメーラーへ電子の“入場券”が届いていた。

ともだちにシェアしよう!