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chapter.3-14

「――何でお前までついてきた」 チケットは運よく2枚用意できた。 不正してでも入ろうと考えていただけに、あれから戸和とは険悪な空気が続いている。 「確実に危ないのは分かってるな?」 「分かってるよ。和泉は勝手に一人で行こうとしてたけど」 そっぽを向いたまま言い捨てた。 この平行線なやり取りを朝から続けたまま、両者を乗せた車は徐々に山道へ入り込む。 テーマパーク『フィッピーランド』。あの後、その詳細を調べようが、ひとつとして情報はなかった。 分かったのはチケットと共に送られてきた所在地と、守秘義務に関する制約のみだ。 幸いにも立地は国内だが、優に3時間は郊外を走っている。 何かあろうが遺骨は山の中。そんな不穏な空気が立ち込めていた。 「…和泉は勝手に一人で行こうとしてたけど!」 「分かった分かった、悪かったな沙南ちゃん」 「あっ、そんな社長の真似を…」 その間にも車は林道を抜け、簡素な駐車場へ乗り入れる。 停止した車内から2人が見渡せど、視界には汚いプレハブ小屋が生えるのみだ。 「テーマパークの概念を忘れそうだ」 「中でワクワクすることがあるんじゃない」 「例えば」 「……スニッ〇ーズが…無限に生成されてるとか…」 悩む頭のお気楽さは放り、戸和は車を後に歩き出す。 萱島が慌てて後を追うも、彼は先立ちプレハブ小屋をノックしていた。 「反応が無い」 2人目配せし、静かにドアを引き開ける。 明かりも無い中身はもぬけの殻で、PCのディスプレイが発光しているのみだった。 「…バーコードを翳して下さい」 テキストを読んだ萱島が視線を巡らせ、手元のスキャナを発見する。 そう言えばチケットメールにはQRコードが入っていた。 急いで携帯を出して光に翳せば、電子音と共に新たなテキストが出現していた。

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