74 / 248
chapter.3-14
「――何でお前までついてきた」
チケットは運よく2枚用意できた。
不正してでも入ろうと考えていただけに、あれから戸和とは険悪な空気が続いている。
「確実に危ないのは分かってるな?」
「分かってるよ。和泉は勝手に一人で行こうとしてたけど」
そっぽを向いたまま言い捨てた。
この平行線なやり取りを朝から続けたまま、両者を乗せた車は徐々に山道へ入り込む。
テーマパーク『フィッピーランド』。あの後、その詳細を調べようが、ひとつとして情報はなかった。
分かったのはチケットと共に送られてきた所在地と、守秘義務に関する制約のみだ。
幸いにも立地は国内だが、優に3時間は郊外を走っている。
何かあろうが遺骨は山の中。そんな不穏な空気が立ち込めていた。
「…和泉は勝手に一人で行こうとしてたけど!」
「分かった分かった、悪かったな沙南ちゃん」
「あっ、そんな社長の真似を…」
その間にも車は林道を抜け、簡素な駐車場へ乗り入れる。
停止した車内から2人が見渡せど、視界には汚いプレハブ小屋が生えるのみだ。
「テーマパークの概念を忘れそうだ」
「中でワクワクすることがあるんじゃない」
「例えば」
「……スニッ〇ーズが…無限に生成されてるとか…」
悩む頭のお気楽さは放り、戸和は車を後に歩き出す。
萱島が慌てて後を追うも、彼は先立ちプレハブ小屋をノックしていた。
「反応が無い」
2人目配せし、静かにドアを引き開ける。
明かりも無い中身はもぬけの殻で、PCのディスプレイが発光しているのみだった。
「…バーコードを翳して下さい」
テキストを読んだ萱島が視線を巡らせ、手元のスキャナを発見する。
そう言えばチケットメールにはQRコードが入っていた。
急いで携帯を出して光に翳せば、電子音と共に新たなテキストが出現していた。
ともだちにシェアしよう!