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chapter.3-16
(ご来園者は13時までに入場して下さい…イベント終了時刻は未定です)
メールにはフィッピーの可愛くない画像までくっついていた。
差し出し元はフリーメールで、その都度アドレスが変わるらしい。
(参加前にパンフレットとウォッチをプレゼントします。入り口ゲート前でお受け取り下さ…)
『――ザッ…沙南、聞こえるか』
矢先、急に唸る無線へ飛び跳ねそうになる。
萱島が慌てて応答すれば、常よりテンポの速い声が追い掛けた。
『お前は先に帰ってろ、こっちは心配ない』
「だから和…」
どうにか文句へ急ブレーキを掛ける。
このままこんな所で応酬していても是非がない。
「分かったよ」
聞き分けの良いふりで踵を返し、PCへもう一通の招待メールを翳す。
戸和の分もこっそり転送しておいて良かった。
背後で再び昇降機が口を開けるや、萱島は躊躇も無く内部へ飛び込んだ。
1フロア、2フロア…体感にして5フロアは降りただろうか。
ドアが割れるや否や外へ転がり、じっと到着した地下施設を見回す。
「これがフィッピーランド…?」
まるで薄暗く、昔に見た病棟だ。
しかも恐る恐る進もうとした手前、備え付けの自販機がガチャンと音を立てた。
「ぎゃあっ」
飛び退いて見れば、取り出し口に何かを吐き出していた。
時計と、紙のような何か。
静かに摘みあげれば、どうやら招待メールに記載されていた“来場プレゼント”のようだ。
「…“フィッピーランド”のしおり」
その場でぱらぱらと捲れば、例の気持ち悪い絵とともに決まり事が書かれている。
これは読んでおくべきだ。
文字を追おうとした矢先、今度は時計の方が喧しく唸り出した。
「あっ…しまった…もう時間が!」
此処まで来て締め出しなどシャレにならない。
幸い一本道の廊下を走れば、直ぐにゲートと思しき場所へぶつかる。
『時計を腕につけて下さい』
液晶パネルのアナウンスへ慌てて従えば、目前のゲートがあっさり左右に割れ始めた。
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