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chapter.3-19

一通り目は通したが、さて肝心の「かいぞくのいりえ」へ向かう方法が分からない。 どうやらゲームのシステム、先のアナウンスからして、他人の時計を奪わねばならないようだが。 (寧ろこの時計のせいで和泉に近づけないなら、外せばいいんじゃあ…) 金具へ力を込めるも、うんともすんとも言わない。 手首から引き抜こうと奮闘している中、耳元で無線のノイズ音がした。 『――…沙南、読んだか』 「あっ、はい」 素晴らしいタイミング。 時間を確認してみれば、知らぬ間にもう5分は経っている。 『俺はコマンダーじゃない、お前は?』 「たぶん違う…と思います」 特段渡されたものはなく、時計は操作も出来なかった。 『そうか、何にしろ動くなよ。もし好戦的な人間がコマンダーなら、常時“サタデーナイト”になる可能性もある』 確かにそうだ。そもそもがこんな怪しいチケットに高額を払うなど、どうせロクでもない奴らに違いない。 『この施設がTPと関係あるかは分からんが、“海賊の入り江”とやらに参加者の目当てがあるんだろう。闇市場か…何か妙な展示でもしてるのか』 「そっか…何人くらい参加してるんだろう」 『敷地はそこまで広くない。接近を禁じているなら、多くて一桁だろうよ』 凄いなこの無線、どんどん的確な答えが返って来るぞ。 間抜けな感動に浸っていると、ザラザラと通信にノイズが混じり始める。 「…和泉動いてる?」 『ああ、俺は取り敢えず端から参加者を始末してくる』 「えっ」 『また連絡する』 物騒な発言を残し、無線機はそれっきり息絶える。 流石行動力の鬼だけれども。 こちらは安地に取り残された手前、どうしたものかとパンフレットを睨めつける。 「それにしてもこんなゲームさせて、主催者は何考えてるんだろ。別に利益なら入場券だけでも…」 文句を言いかけ、突如目を刺す光へぎょっとした。 時計のディスプレイが真っ赤に点滅し、なにやら警告が出現していたのだ。

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