80 / 248

chapter.3-20

“Another Player” (誰か来た…!) 窓の脇へ転がり、曇りガラスから周囲を見回す。 しかし何ら気配は探れない。おまけにこの警告が、何メートル圏内を捉えているかも分からない。 30秒以内に離れないと不味いのは向こうも同じだ。 次の進退を迷い、全身の血流が喧しくなる。 (そうか…相手の方角は表示されてるんだ) 時計を覗き込めば、文字盤の内周へ矢印が点滅している。 つまり互いの所在地はばれ、この状況でサタデーナイトになれば戦闘へ縺れ込む筈だ。 (…寧ろ彼がコマンダーで、わざと非戦闘時に歩き回っている可能性も) この警告を利用し、周囲のプレーヤーを探知する。そして直ぐさまサタデーナイトへ切り替え、急襲する作戦かもしれない。 どうする、一端この小屋を出るべきか。 退路を確認して立ち上がるも、次にはスピーカーからサイレンが喚き始めていた。 弾かれた様に時計を見れば、矢張り先の警告が止まっている。 敵の位置表示も消え、ディスプレイは緑色に変色している。 ――“Saturday Night” よもや接近していたのはコマンダーだったのか? 動揺しつつも後退した刹那、先まで頭上にあった窓ガラスが砕け散っていた。 (撃ってきた) 元よりその気なら、躊躇している間はない。 確かに平和交渉したところで時計が外れないのでは、端から切断した方が早いわけだ。 「――…おい、小屋に誰か居るんだろう!」 ところが遮蔽物を確保する頃になり、今度は弾の代わりに声が飛んできた。 「撃って悪かった!もう何もしないから出てきてくれ…どうも俺はこのイベント、勝手が分からなくて」 どもり、裏返るその声が演技かどうか。 生憎図る術はないが、萱島とてごまんと聞きたい件があった。 裏口の戸をゆっくりと押し開くや、建物へ沿って回り込む。 やがてログハウスの正面へ見えたのは、革ジャケットを纏う猟師風の男だった。

ともだちにシェアしよう!