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chapter.3-21
「おっ…おう、こんなお嬢ちゃんまで来てたのか」
相手は萱島の容姿へ少々面喰っていた。
不名誉へついムッとするも、子供だと思われているならまあ都合は良い。
「まさか一人で来てんのかい?」
「ううん、連れと」
「…そうか、あんたコマンダーだろう。今の良いタイミングで切り替わったもんな?」
何だ。その問いはつまり、この男は該当でないのか。
ルールは至ってシンプルに思えたが、このゲームには心理戦も必要そうだ。
嘘は吐けない性格ながら、萱島は返答を逡巡した。
「はっはー、警戒されてるな!お嬢ちゃん心配するなよ、俺は唯の猟友会の人間なんだ」
翳した獲物は確かに、所持が許される散弾銃の類いだ。
だが幾ら新参でも分かる。こんな妙ちきりんなテーマパークへ、善良な市民が迷い込む筈がない。
「なあ、俺と組まないか?あんたなら常時サタデーナイトに出来るんだろ、そのまま他を伸してゴールしちまおうぜ」
「…いいよ」
幸いなのはこの男が自分を“有用”と見ていることだ。
嘘がバレるとしたら、次の解除タイミング。その時にはお互い離れざるを得ないのだから、もう知らぬ存ぜぬで逃げてしまえば…。
「じゃあ宜しくと言いたいところだが、先に時計を見せて貰おうか」
「えっ」
裏の人間が用心深いのは当然だ。
甘さを突かれた萱島が、つい半歩後退る。
「コマンダーってなあ、切り替えのスイッチがついてんだろ?知らねえけどよ」
そうだろう。仰る通り。
だがそんなもの知ったことではない。
不味い顔ながら、従う素振りで左手を寄越す。
そうして男が近づくや、萱島は躊躇いなく顎から蹴り上げていた。
「うぐっ…!」
隙を狙ったつもりが弱い。
直ぐさま背後へ距離を取るも、相手は既に散弾銃を掴んでいる。
「図ったなこのクソ餓鬼が!!」
そんな長い獲物、近接戦闘で振り回すつもりか。
負けじとジャケットの下から愛銃を引き抜くも、反撃前に隣の木が消し飛んでいた。
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