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chapter.3-23
「海賊の入り江には何があるの?」
萱島の声に当然のこと、通信先は黙り込んだ。
無駄かと放り出そうとした手前、遅れて困惑した疑問が返る。
『――…誰だ?サイモンは…無線の持ち主は?』
「死んだ。海賊の入り江には何があるの?」
『…おい冗談だろ、俺たちはその男に雇われただけなんだぞ』
成る程、何となく場の状況は理解した。
今殺した男が数人を雇い、ゲームの報酬目指して指揮していたらしいのだ。
「悪いけど死んでる」
『はあ?まじかよ…何してくれてんだ』
「…じゃあ提案なんだけど、貴方たちが雇われた額で時計を売ってくれない?」
ガメられる可能性はあったが、向こうにとって条件は良い筈だ。
何も労せずともペイが来る。
大人しくそれだけ持って帰ればwin-win、だがその読みを相手は遮った。
『――アンタも新規勢か?時計は死ななきゃ外れないらしいぞ』
「えっ」
足元に転がる死体を覗き込む。
体温や脈と連動でもしているのか。確かに彼の腕からは、ロックが外れて時計が転がり落ちていた。
『まさか腕切り落とせってのか?』
「…えっと分かった、じゃあ海賊の入り江まで付いてきて。ゴール出来たら報酬は払うから」
コマンダーさえ倒してしまえば、サタデーナイトの制約は受けない。
その上での提案に、相手は思案しながらも了承を寄越していた。
『はーん…まあ良いぜ、取り敢えず落ち合おう。アンタ、入り口ゲート付近に居るんだよな?』
「ログハウス裏手の林」
『分かったよ、2人で向かう』
完結して途絶えた無線を放り、萱島は傍にあった時計を拾い上げる。
自分のものと変わらない。
金属のベルト部分を調べれば、確かにセンサーらしきものが内蔵されている。
(…“Mon”?)
文字盤の隣にうっすら文字が入っていた。
慌てて自分の時計を調べれば、“Wed”と別な字列が見えた。
「…曜日だ」
Monday、Wednesday…。順当に行けば7日分。
つまり参加人数は全部で7人。
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