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chapter.3-27

衝撃音のち、火薬臭が周囲に立ち込める。 引き摺られるまま去った後ろを振り向けば、犠牲になった草木が濛々と煙を上げていた。 「何がPMCだ…日本で手榴弾なんざ持ちやがって」 「和泉走れる、自分で走れる」 「なに?」 既に滅茶苦茶機嫌が悪い。 だが如何せん突っかかっている暇もなく、直ぐに矛先は連中へ戻ってくれた。 「ハンドガンで真っ向勝負じゃ分が悪い、弾切れを待つか」 「あのー、逃げませんか」 「ん?」 「コマンドサンボ使ってくるんです、さっき喋ってた子」 しかも競技でない、殺す方。 青ざめて弱音を吐く萱島の足元、もう迫り来る敵の5.56ミリ弾が飛び跳ねる。 危ないどころの騒ぎでなかった。 そもそも一時逃げ遂せたとして、その後の策が無いのではじり貧だ。 「…チッ、そのまま走れ。後で追い付く」 「何言ってんの!?」 「黙れ口答えするな、何でも俺の言う事を聞け」 毎度のことだがこの亭主関白。 さしもの萱島も開いた口が塞がらぬまま、素っ頓狂な声を上げていた。 「何それ!いつもそうやってお荷物扱いして」 「おい待て沙南」 ショックを受けた萱島が俄かに進路を変える。 その走り去る方向へ戸和が焦るも、小言など聞いてる間は無かった。 (自分が塔へ向かうしかない) 背後で始まった銃声に後ろ髪を引かれながら、全速力でパーク中央を目指す。 自分がコマンダーの潜む塔へ向かい、この時を転ずる他ない。 例え時計を奪えなかろうが、相手を追い詰めさえすればサタデーナイトは途切れる筈だ。 「…人だ」 漸く開けた場所へ来た。 萱島の目前へ、ぼつんと置物の様に死体が転がっている。 恐らく、塔の狙撃手にやられたのだろう。 これで現状、参加者は出揃ったことになるが。 (本当に遮蔽物がない) この広間に身体を晒せば、終いだろうか。 しかし惑っている間はない。背後では戸和が窮地に立たされ、今にも殺されてしまうやもしれないのに。

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