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chapter.3-30
フィッピーランドには無音が訪れていた。
俄かにサタデーナイトが終わり、時計へ例のアラートが出現。
やむを得ず件の2人は視界から消え、戸和は単独森へ残されていた。
塔のコマンダーが防衛に迫られたのなら、萱島当人は無事だろうが。
生憎此方も近づけぬ現状、戸和は上着の無線機を引っ張り出す。
「おい聞こえるか?」
幸い応答は早かった。
元気な声に安堵はしたが。今日の色々が積もり、つい叱責が口をつきそうになる。
「あのな、もし罠だったら…待て、未だ塔の中に居るのか?電波が悪い」
確かアラートの解除に要したのは100メートル近い。
内部に居るなら、既に相手は殺したということになるが。
『――…ピンポンパンポーン――』
背景、唐突に電子音が割り込む。
反射的に振り向けば、スピーカーが再び園内放送を吐き出している。
『――プレーヤー各位にお伝えします、ただいまプレーヤー1名が不正にウォッチを外す行為がありました』
不正に時計を外しただと。
確かに壊せば可能だろうが、件の2人でないとしたら。
萱島か、それとも塔のコマンダーか。
『――プレーヤー各位にお伝えします、本日のゲームは不正行為により中止となります。これより係の者がウォッチ回収に向かいますので、プレーヤーの皆さまはその場から――』
「…中止?」
眉を寄せてスピーカーを睨んだ。
話が急に過ぎてついていけない、そのプレーヤーを粛正して終いでないのか。
中止とは一体…高い参加費用の補償もなく、プレーヤーが納得するのか。
(そもそも何故“不正”などと断定した?)
例えば銃弾が当たって砕けた可能性も。未だ相手が生きてる内に剥ぎ取った可能性だってある。
不正と断定するなら、何処かでずっとゲームを監視していたのか。
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