91 / 248

chapter.3-31

(成る程な…確かに参加費だけで良い筈が、何故ゲームまでやらせるのかと思えば) 畢竟するに、このゲームは金持ちの道楽用なのだろう。 TPはこのバトルロワイアルをエンタメ映像として公開し、上乗せの鑑賞料で荒稼ぎしていたという訳だ。 胸糞悪い。 不快な感情は拭えぬまま、兎にも角にも無線を取り上げる。 しかし其処で気付いた。既に時計の電源は切れ、アナウンス通り完全にゲームは終了しているではないか。 「沙南今何処に…」 やっと合流しようと呼び掛ける。ところが今度は後方の木が妙な音を立てている。 さっきの2人か。 直ぐさま遮蔽物を確保しようと退いたが、樹木から落ちて来たのはやけに間延びした声だった。 「待たれよ兄ちゃん」 引き金の指が留まる、その間に“コーレニカでない方”の彼が降って来る。 「…未だやりあう気か?」 「いやもう撃たん、任務が御破算なら俺らは撤収するだけだ」 なんて切り替えの早い連中だ。 勿論賢明ではあるが、理性100%の判断軸に眉を顰める。 「――だから俺を置いてくなコーレニカ!…まあ悪いこと言わねえから、係とやらが来る前に帰った方がいいぜ。ご覧の通り、死体が出てもカラスが食っちまうからよ」 「忠告感謝するが…連れを捜してからだ」 「それは勿論だ。悪ィな、無賃じゃなきゃアンタを助けてやれたんだが…コーレニカ!俺を見殺しにする気か!」 先まで殺しに来ていた人間が、助けるなど何を宣っているのやら。 戸和の内情を察したのか、コーレニカに怒鳴っていた青年が口端を上げる。 「悪かったって、こちとら殺す気は無かったんだ。あ、手榴弾を投げた件は…」 会話の中途、幾つか頭上をヘリが飛び始めた。 おまけに地面を這う重低音は、高機動多用途装輪車両(HMMWV)のエンジンらしい。

ともだちにシェアしよう!