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chapter.4-3
「ふーん…しかし妙ですな」
多少もう1人より冷静に見える。
老眼鏡で輪郭を歪ませた顧問は、可笑しそうに青年の姿也を探った。
「聞けば君、自分の胸へ生物兵器を飼ってるそうじゃないか。それもBSL-4…致死率90%超のウイルス」
「…致死率90%?」
「そうですよ事務局長、この科学者は心肺停止で飛散するウイルスを仕込んでおるのです。そんな災厄の象徴のような人間が、何をもって“箱舟”などと…」
良くも人の家でベラベラと。
そろそろ退屈に殺意が滲む、御坂のボルテージなど意に介さず、客人は雨を遮って捲し立てている。
「どちらかと言えば、君は“パンドーラ―の箱”ですよ。開ければ疫病や悲嘆などあらゆる災いが飛び出す…」
「サー、爾に出ずるものは爾に反ります」
声色が変わった。
密やかながら、明らかに御坂の声が敵愾心を孕み始めていた。
「災厄を齎したのは箱を開いた人間…忠告して申し上げると、好奇心は猫をも殺すという事だ」
殺す、と。
たかが慣用句の例えにすら身が竦む、その瞳の恐ろしさよ。
凍り付いた客人はどうにか我を保ち、曖昧に笑む。
2人とて御坂を怒らせて不味いのは承知の上だが、手ぶらで帰る訳にもいかず、未だ猫撫で声で追い縋る。
「ま、まあその通り、箱は閉じたままの方が良いということだね」
「そして閉じた上での提案だが…タダとは言わんよ君、我々にもブラックボックスの仕様を教えてくれんかね」
御坂は会話から愛想を尽かし、余程気になる外を睨んだ。
朝から付き纏う嫌な予兆が消えない、すべて雨の所為か、はたまた。
「――…第3ステーション聞こえるか」
そこで矢庭にインカムを手繰り、モニタールームを呼んでいた。
暗雲の隙間へ妙な光がちらついている、しかもヘリにしては余りに高度が低い。
『勿論ですサー、如何なさいました』
「南南東の上空に何か見えるか、高度は約350フィート」
『…何か光りましたね、サーモで見る限りヘリのようですが』
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