98 / 248

chapter.4-4

「…どうした御坂本部長、何かあったのかね」 先から無線と会話している相手に気付き、顧問らが身を乗り出す。 生憎構っている暇はない。 雲間を彷徨うヘリは、法定高度を超えてみるみる角度を下げている。 『まさか敷地内に』 「もう領空だルーク、撃ち落とせ」 『…申し上げ難いんですがサー、貴方の居ない間に重火器の類はすべて押収されまして』 自衛力は無い。オペレーターの震える声をバックに、雨雲からヘリが完全に姿を現す。 もうシルエットすら分かる。 此方のアイレベルまで降下し、お次は猛然と加速して突っ込んでくる。 掃射でハチの巣にする気か。 自爆覚悟で建物内へ突っ込む気か。 漸く窮地を悟ったが猶予は十数秒、迎撃手段はなし、 200km/hで突入された被害が脳内を駆け巡り、 オペレーターは非常ベルすら押せず蒼白 『――総員窓から離れろ!』 全館放送で御坂の声が割り込んだ。 はっとしたオペレーター同様、その一声が職員に窮地を知らせ、どうにか数秒の回避時間を生んでいた。 『――!…っ全職員、デスクの下で回避姿勢…』 遅れたオペレーターが必死になぞる。 直後防弾ガラスへ到達した軍用機が突っ込み、衝撃波へ一面のガラスが波打った。 その途方もない熱量が建物全体を揺らし、不気味な地鳴りを伴い。 全員が感知した頃には、分厚い窓ガラスが木端微塵になり弾け飛んでゆく。 『――…サー!何事ですか!』 インカムへ飛ぶサイファの絶叫を耳に、御坂はラップトップを監視モニターへ繋いでいた。 幸い火災や爆発はない。 部屋の中央をヘリが食い荒らす惨状ではあるが、建物自体が崩壊するほどでは無い。 「7階に軍用ヘリが突っ込んだ。避難誘導に回れ」 『敵の人数は分かりますか』 「確認する」 通信を再びステーションのオペレーターへ切り替える。 動揺しつつも既に平時の落ち着きへ戻り始めた、彼はサーモで敵の頭数を割り出してくれた。

ともだちにシェアしよう!