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chapter.4-5
『約1個分隊…10人です。数人降りてきました、しまった…人質を』
「人質?」
『うちの職員を1人盾に』
人質とは即ち対価要求だ。
連中は単なる殺傷目的でなく、交渉ありきで乗り込んだのか。
トワイライト・ポータルとの関係は知らないが、此処へ来たなら目当ては御坂ということになる。
(部屋に警備を投入するのは悪手)
重症の職員が居るであろう中、立て籠もられ場が膠着しては不味い。
窓を失ったフロアには豪雨が降り注ぎ、今も容赦なく負傷者の体温を奪っている。
なら謀るべきは敵の誘導。戦場を移し、救命を並行する。
「第3ステーション管理班、ドクターヘリと救急車を要請…それと今から言う防火シャッターをすべて閉めろ」
『は…医療チームは下に待機させますか?』
「連中は退かす、少し待て」
管理班は当たり前に困惑したが、直ぐに止まる間もなく対応へ追われた。
御坂は既にシナリオを組んでいる。
次は攻勢だと子機へ手を伸ばすも、既のところで外野が阻んでいた。
「――御坂ァ!」
固唾を飲んで見ていた客人が怒鳴り、拳銃を手に掴み掛かる。
「ヘリが突っ込んだだと!?非常口はどこだ…客の避難誘導が先だろうが!?」
胸倉を絞められた。それを認め、御坂の瞳孔が猫のように収縮した。
目にした事務局長が一転青ざめる。
図に乗った。
しかし手を離す間もない。矛を収めようとした頃には、度し難い力で床へと引き倒されていた。
「がっ」
「私に指図するな愚蒙」
地面へ転がり、悶絶する男の顎へ足を掛ける。
そのままギリギリと負荷を加えれば、仰け反る首が限界を超えかけた。
「、ま…待で…、」
「お前が蒔いた種だ。テロリストが怖いと言うなら、私が首を折ってやる」
確かにUNSDHの予算を削ったのは安保理だが、自分が直接食ったわけでもない。
過剰な制裁を身に受け、事務局長の喉はひゅうひゅうと喘鳴し始めた。
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