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chapter.4-8

悪魔と契約した。 もう冷めて他所を向く相手を前に、男は絶望に伏していた。 結局は強者の手の内に収まる、まるで、嚆矢から仕組んでいたようでそうでもない。 単に搾取側、ヒエラルキーの上が勝つというだけ。 『――サー!連中が部屋を出ました、警備に交戦させます』 「しなくていい、負傷者の救助に回しな」 『しかし連中階段に走…そうですかサー、またですね…また何か勝手をなさいましたね!?』 今度はインカムから喧しい部下の声が割り込む。 御坂は“勝手”などと勝手な非難を受けながら、煩わしげに廊下へ踏み出していた。 『経緯は存じませんが、連中を貴方の側へ呼んだということですか?頭にピラニアでも湧いてんですか!』 非常階段以外を塞いでおいた故、迷わず来れたようだ。 次第に奥よりバラバラと統率の薄い足音が近づき、空気が質量を増す。 『いい加減にして下さい!貴方の両手にはWMAが10兆円の保険金を掛け、そもそも全身に時価の…』 サイファの悲痛な叫びをBGMに、先頭が御坂の視界へ飛び込んだ。 既に捕虜をとる必要も無い。 今日も嫌いな雨を睨みつつ、城主は久々にH&K USPを引き抜いていた。          Chapter.4         Gods' wrath         - 神の怒り - 「――頭を蹴り潰しましたね、一体誰が掃除を…無事を心配したのが余計でした」 あれから時間にしてたった数分。 サイファが9階へ追い付いた頃には、既に廊下で数人の警備が吐いていた。 ペンキで模様替えをしたような有様で、おまけに数歩過ぎる間に“もの”を踏む。 ブラッドフィースト完全再現。 戦犯である上司へ苦言を呈すも、直ぐに階下の状況質問へ遮られた。 「…重症3名、軽症17名です。間もなくヘリが来ます、今は応急処置を」 簡素な返事で御坂は去っていく。 背後では血臭の換気も追いつかず、未だ警備が吐いている。 とんだ世紀末である。サイファは眉間に皺を刻み、さっさと事態を収拾すべく司令官を追いかけた。

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