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chapter.4-11

問題はそこからで、目前に現れたのはこれでもかとうず高く積まれた広大な武器庫であった。 見本市も兼ねているのだろう、人生でお目にかかれる機会は無いと思っていたスティンガーら地対空ミサイルを始め、文字通り“入り江”めいた内部にはイージス艦まで停泊していた。 ゲームの参加者は武器取引が目当てだったのか。 施設を握るトワイライト・ポータルは、武器商社ということになるが。 (日本までこれだけの在庫を…そんなでかい組織なの?) 某家具屋のように聳え立つ嵩へ圧倒され、立ち竦んだ。その間に萱島は後ろ手に縛られ、一隻の漁船へと押し込まれてしまった。 気付けば神崎も戸和の姿もない。 倉庫へ隔離された現状に焦り、必死に自分の無抵抗を示す。 飛んできた質問にも、半ば食い気味に応えた。 その結果、冒頭の通り相手を呆れ返らせた訳だが。 「念の為記録を取る、チケットの購入動機も言ってみろ」 「…購入動機?あっ!社長…社長を捜して、2人で!それで、あと、あとうちの会社にそちらの人が来てあと、それから!」 「だから一個ずつだ!」 尚も叱られた。悲しそうに黙ったのも一瞬、萱島は思い出したように大声を上げる。 「和泉は!?社長は何処行きました?」 「お前の連れならこの船に同乗してる!これより我々はフィリピン海で護衛艦隊と落ち合い、中東に向かうのだ」 「ちゅ、中東…」 つまり神崎の身柄を直接、本社まで持ってけやという方向に進んだらしい。 直ぐに殺害はないだろうが、これでは益々状況が悪化してしまう。 「あのぉ、それまで自分はこのままですか」 「何か使えるかもしらん、いい子に体育座りして床の木目でも数えてろ」 「床の木目を…」 まったく素直な性分から、萱島は言われるまま床へ目を落とす。 頭上には潮臭い風と警笛が舞い込み、一行が乗る偽装漁船の出航を告げていた。

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