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chapter.4-13

「…どうして此処に居る?ガロン」 結果一周回り、また冒頭の問いへ戻っていた。 敵意も、目立った感動もない。 懐かしい表情が呆れたように少し砕け、無駄話をしそうになる。 「まったくの自由なんて利かんさ、俺にも(しがらみ)は付いて回るんだ」 「つまり誰かに脅されてるってことか?」 「脅されてる?悪いことは散々やった、今更そんな被害者ぶった見方はしない」 のらりくらりはぐらかし、でも否定もしない。 何かが戸和の古巣を。この男の環境を縛り付けていると言うのか。 「そうだ和泉、ジムはどうだった」 ふと流れを切り、今度は思い出したようにガロンが呟く。 ジム。そこで少しラグがあるほど、答えを忘れるほど随分奥に仕舞い込んでいた。 「死んだが…会えた」 「十分過ぎるじゃないか、あれも皆も報われた」 「何も言わず抜けたのに、俺に対する制裁は無いのか」 「制裁?ははー…まあ俺達は辛かったぜ、でもそれだけだ。じゃあな」 「…待て!ガロン」 久しい相対にも関わらず、男はもう背を向け遠ざかろうとしている。 敵対している現状、これ以上無駄話の時間はない。 そして言葉に詰まり、特に聞きたい台詞も浮かばない。 「俺がお前の為に出来る事は?」 捻り出した問いは、あからさまに幼稚な色が滲んでいた。 自分から放り出していようが、目の前にしてつい欲深い手が伸びていた。 それに対するガロンは振り返り、笑いもせず、一手で突き放し去って行く。 「いつまで子供気取りなんだ?もう十分だろ、勝手に幸せに生きてろ」 親代りと言えど所詮は他人だ。 その捨て台詞が如何に深かろうが、愛に溢れていようが。 他人だ、序に言うならば過去だ、と割り切ろうとした。 成長して大人になった筈の、其処に立ち竦む己の胃だけが鈍く傷んでいた。

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