107 / 248
chapter.4-13
「…どうして此処に居る?ガロン」
結果一周回り、また冒頭の問いへ戻っていた。
敵意も、目立った感動もない。
懐かしい表情が呆れたように少し砕け、無駄話をしそうになる。
「まったくの自由なんて利かんさ、俺にも柵 は付いて回るんだ」
「つまり誰かに脅されてるってことか?」
「脅されてる?悪いことは散々やった、今更そんな被害者ぶった見方はしない」
のらりくらりはぐらかし、でも否定もしない。
何かが戸和の古巣を。この男の環境を縛り付けていると言うのか。
「そうだ和泉、ジムはどうだった」
ふと流れを切り、今度は思い出したようにガロンが呟く。
ジム。そこで少しラグがあるほど、答えを忘れるほど随分奥に仕舞い込んでいた。
「死んだが…会えた」
「十分過ぎるじゃないか、あれも皆も報われた」
「何も言わず抜けたのに、俺に対する制裁は無いのか」
「制裁?ははー…まあ俺達は辛かったぜ、でもそれだけだ。じゃあな」
「…待て!ガロン」
久しい相対にも関わらず、男はもう背を向け遠ざかろうとしている。
敵対している現状、これ以上無駄話の時間はない。
そして言葉に詰まり、特に聞きたい台詞も浮かばない。
「俺がお前の為に出来る事は?」
捻り出した問いは、あからさまに幼稚な色が滲んでいた。
自分から放り出していようが、目の前にしてつい欲深い手が伸びていた。
それに対するガロンは振り返り、笑いもせず、一手で突き放し去って行く。
「いつまで子供気取りなんだ?もう十分だろ、勝手に幸せに生きてろ」
親代りと言えど所詮は他人だ。
その捨て台詞が如何に深かろうが、愛に溢れていようが。
他人だ、序に言うならば過去だ、と割り切ろうとした。
成長して大人になった筈の、其処に立ち竦む己の胃だけが鈍く傷んでいた。
ともだちにシェアしよう!