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chapter.4-20
「お前は太陽の下に出て、物差しが変わっちまったんだ。俺にあてがったらそりゃズレるさ」
「…だったらどうしろって言うんだ、もう何もするなって言うのか」
「おっと逆に悩んでハゲるか?なら慈悲で行く末くらい教えてやるよ」
俄かに肩を組まれ、足元が揺らいだ。
ガロンは相手を引き寄せるや、声を潜めて話を続ける。
「――俺はな、あのけったクソ悪いTPのCEOが大嫌いなんだ。このまま信用を積めば、いずれTP本社に呼ばれて面が拝めるよ」
矢張り。この男の性格を鑑みて、TPに追従するなど違和感を抱いていた。
「そうしたら差し違える。この辺りだ、俺の結末は。知ったなら二度と追い回すな」
「…知ったらだと?」
ありったけを乗せて睨んだ。
覇気を取り戻した青年が噛み付くも、寸前で物理的な凶器が迫る。
「そうだ邪魔するな」
初めてガロンの銃口を受けた。
口が利けないのは重圧からか、いや
「もうお互いの人生を邪魔するな和泉。俺がお前の名を呼ぶのは、これで最後だ」
部屋に戻れ、とにべもなく吐く姿は逆光だ。
見えない表情を前に、何故萱島に黙って部屋を出たのか合点がいった。
両立しないからだ。
この男を命がけで救う事と、萱島と生きることは同時に。
部屋に戻り、錠の閉まる音を背後に立ち尽くしていた。
数分経った折、戸和はベッドからの声に顔を跳ね上げた。
「…いずみ?」
「悪い、起こしたか」
急かれて距離を詰め、上体を擡げる姿を覗き込む。
朧げに、純真に見返す、たまらなく愛くるしい瞳。
それを守る為に生きてきた、これまでの数年。
「海でも見てた?」
柔らかい笑みに目を見張る。
――いつだってあの時、引き止めていれば良かった
随分前に吐いた、あの台詞を何故また繰り返そうとする。
迷った末に結局後手で、行き場の無い後悔を抱え、今日に至っても。
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