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chapter.4-21

*** カンカン忙しなく鉄筋を踏む音。次々連なる船舶のエンジン音。 午前7時を迎えた一帯は騒がしく、大海原のど真ん中とは思い難い活気だ。 「――…でっかい船だ!」 「凄いだろお嬢ちゃん!フリゲート、装甲艦、高速戦艦…クウェートに入る前に航空隊と合流して、連中を火炙りにしてやるぜ!」 手摺から身を乗り出す萱島の隣、一行を甲板へ連れ出した作戦長が歓喜する。 退屈な海を辿ること2日、俄かに退室を促された萱島らは、真っ白い日の照るメインマストへ招待されていた。 そうして見えたのは、海上へ次々と集結する黒い戦艦の群れだ。 「クウェート侵攻…?社長や俺達の身柄はどうなる」 「さてな?運が良ければドバイで降ろしてやるが、正直安全の保証は…」 背後で戸和と男が応酬を始める。 加わろうと手摺から離れた先、矢庭に頭上を大量の影が通り抜けた。 (びっくりした) ぎょっと見上げると、もう紙吹雪のようなカモメが遠ざかってゆく。 群れの塊でもなく、あれだけ大量に、一目散に。 「…天災の予兆みたいだ」 「あ?何…?レーダーに何か引っ掛かった?ああ…直ぐ行く」 萱島が自然の異変を気にする隣、なにやら船の側もエラーが起きたらしい。 追及したげな捕虜を構う余裕もなく、作戦長は足早に操舵室へ駈け込んでいた。 「おいどうした、タンカーの進路にでもぶつかったか?」 「あっ、や、それが作戦長」 無線の受話器を手に、部下が早口で詰める。 「25km先にいきなりデカいのと、ターゲットが大量に…その、フリゲートがレーダーで拾ったんですが…」 「25kmだと?」 正直、海上の距離感が掴めないが想定外だった。 イージス艦を卸しにきた業者は、500km先まで探知できる最新SPYがどーのこーの、頻りに捲し立てていたというのに。

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