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chapter.4-22

「勘弁しろよ、お前ら仕様も分からん女に乗ってんのか?」 外野から悠長な声が割り込み、一同が睨め付ける。 日の当たらない隅で椅子を揺らす神崎が、ねずみ講に言い包められた情弱を見る様に呆れていた。 「ノルウェー海軍のレプリカなら、搭載しているレーダーはSPY-1F…探知は250km強」 「あん?」 「以前にイージスシステムってのは防空用なんだよ。レーダーが直線に飛ぶ以上、海面付近の高度は水平線までしか探知できない。つまり大体20km以内な」 「水平線までしか…って何でえ?」 「地球は丸いからだろ」 思わず部下が脳みそ蕩けたような声を出していたが、なるほど。確かに地面が球体なのではそうなる。 しかし、何も感心している場合ではない。 「距離と速度から考えて、このまま進めばぶつか…ん?増えた?8隻?」 「8隻…?海軍の演習か?AIS(船舶自動識別装置)情報はどうなってる!」   「あ、はい今報告させてます…えー…船名がUSS CARL VINSON CVN-…」 瞬間、椅子の背凭れに仰け反っていた神崎が何故か跳ね起きた。 付随して派手に椅子が転がり、周囲の数名が飛び上がる。 「タイプ不特定、国はアメリカ、サイズが…335 x 82 m?」 「な、何だそのデカさ…タンカーか?」 「違う…ニミッツ級だ…」 さて、さっきまでの騒ぎを楽しむ余裕は何処へやら。 神崎は突然会議の渦中へ突っ込むや、呆気に取られる作戦長の胸倉を掴む。 誰も止める間もなく悲鳴が漏れた。 一室の外では、うっかり漁船へ迷い込んだカモメがペタペタ歩き回っていた。 「――CARL VINSONはアメリカの原子力空母だ!8隻なら空母打撃群!それが危険信号も寄越さずこっちに向かってるだぁ?」 「げっ、原子力空母…」 「俺はなぁ、お前ら如きにそんな超火力持ち出せる個人は一人しか知らねんだよ!お前ら御坂に喧嘩売っただろ!」

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