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chapter.4-24
「え、えっとえっと…で、電…」
「貸せ…電話帳、これだ、掛けたぞ」
見るに堪えない操作から携帯を取り上げ、勝手にコールしては押し付ける。
些か乱暴な扱いに目を白黒させている間に、萱島の耳元ではぷつりとコール音が途切れていた。
「あっ…つなが…せん、先生!萱島だす!です」
『おはよう、どうしたの』
矢張り海上の音質は悪いが、しっかり繋がってしまった。
しかも対応は至って昔のままだ。
「先生撃たないで!お願い、死んじゃう!!」
『どうして』
「萱島とかあの、社長とか戸和くんとかがいっぱい乗ってます!!」
『ほんと、じゃあ悪いけど端の方に避けといて』
「ええ…そんな魚の小骨みたいな…」
会話の最中にもとうとう漁船へミサイルが届き、頭上にあったマストやらレーダーやらが粉微塵に消し飛ぶ。
楽天的な神崎ですら死を覚悟した。
職員が次を恐れ、我先にと海へ投身してゆく。
しかしふと、カモメが何度も過ぎる空白の長さに気付く。
数コンマして恐る恐る首を擡げた。萱島の視界にはもう、何の怒りもない無音の海が広がっていた。
「――と、止まった…?」
安堵に力が抜け落ち、誰も動きもせず放心していた。
どうやら彼の覇王様は、未だ人の心は捨てていなかったようだ。
萱島の視界の端には、怠そうな顔の神崎が転がったままサムズアップしている。
「後で飴買ってやるよ」とか何とか、あんまり嬉しくも無い労いを寄越しながら。
さて、それから数十分後には、艦の火災は既に鎮火しつつあった。
それでも末恐ろしい光景の中、神崎らは次第にぞろぞろと辺りを囲う軍人らを眺める。
フィッピーランドに居た連中とは規模が違う。
全員正規の記章を付けている故、当たり前に空母ごと海軍を引き連れてきたのだろう。
「ご子息」
不意に声がした。
次いで頭上から人影が降り立ち、風圧に思わず仰け反った。
「奇遇ですね、まさかこんな所に居らっしゃるとは」
「お前は…御坂のストーカー!」
「副官です、ご子息」
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