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chapter.4-28

「取り敢えず遥、お前はお説教があるから残りな」 「何の説教だよ」 「まあ、痩せ我慢も其処まで続くなら褒めたげようか」 萱島と戸和には何のことやらだったが。 ちょっと警戒が薄れつつある空気の中、かの支配者は徐に身を起こし席を立つ。 そして真っ直ぐ此方に歩いてきた。対面した萱島は逃げるのも忘れ、棒立ちで僅かな間に走馬燈まで過ぎらせた。 「そんな顔しないよ」 「てっ」 額を軽く小突かれ、びっくりした萱島のATフィールドが割れる。 「せんせえ…」 「和泉君も。遥の無事が分かったら、首を突っ込むのも考えな。次は砲弾の前に居たって私…僕はもう護ってあげないからね」 脅しではない、声色の柔らかさに漸く萱島の肩が下がる。 ただ隣の戸和だけが小難しい顔をしていた。確かあの船上で見た、何か腹の中へ潜めているような。 「御坂先生、その…捕縛した職員の中に」 「未だ捕縛も終わってないよ、おまけに数人海に飛び込んだ」 一寸、御坂の瞳が戸和の方角へ移る。 すべて言わずとも知っているような目へ、青年もそれ以上の追及を噤んだ。 「遠洋だから生死は知らないが、何か確認したいなら好きにしな」 「…先生は先ほど首を突っ込むなと」 「僕はそう言ったよ、どうするかは君の勝手」 2人の目前、御坂は腰の弾倉入れをひとつ開ける。 そうして取り上げた見覚えのあるロザリオを、放心する戸和の手へと握らせていた。 「引き取り手が見つからなかったから、君に返そう。結末迄は変えられなくとも、それが今手中にあるのは君の選択の結果」 なんて、此処まで見透かしたタイミングでこの遺品を自分に。 思わぬ邂逅に礼も紡げぬ青年へ、傍らの萱島だけが不安そうに眉を寄せていた。 「誰かにとっての最善じゃなく、自分にとっての最善を選びな。君が唯一騙せないのは君だけだよ」 「先生…」 「良い子、案内させるからご飯食べといで」 頭を撫で、もう会話は終いとばかりに距離を取る。 彼はインカムで部下を呼び出し、2人を階下の食堂まで案内するよう言い付けてくれた。

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