124 / 248

chapter.4-30

「捜しに行けばいいじゃん…一緒に」 僅かな反抗は結局、届きもせずサラダの中へ吸い込まれる。 戸和はいつまでも此方を慈しみ、庇護の対象にしている。 勿論嬉しくもあった。 けれど、あの時も逼迫した場面に居たのに、ひとつも萱島に頼ろうとはしなかった。 そして今の苦しい状況にも一切、何も期待せず。 「――…ご歓談中すみません、Mr.神崎のお連れ様ですか?」 「あ…は、はい!」 両者反応が遅れ、声掛けに弾かれて向き直る。 何時の間にやら傍には赤い髪の男性が立ち、此方にラフな敬礼を示していた。 「マチェーテと申します。お二方を日本まで送るよう御坂に指示されました、どうぞ宜しく」 「ほ、本当ですか…すみません何から何まで」 「いいええ、お気になさらず。お食事が済みましたらお迎えにあがりますが、何時頃がよろしいですか」 「えーっと、それじゃあ…」 現時刻を確認しようと腕時計を見た。 萱島はその造形を前に、不意にフィッピーランドでの一コマを想起していた。 (あれ…?あの時確か) コマンダーを追い掛け、塔に向かった。 其処で神崎と再会し、彼は萱島の時計を切ってしまった訳だが。その時。 (社長は未だ時計を付けてて…それから確かに時計は作動して) 事の経緯を思い返し、ひとり妙な汗を湧かせる。 否、現状彼はピンピンしていたのだから、毒針が刺さったなんてこと、ない筈なのだが。 「――いってえ!!!」 「そうだね、痛いね」 「教え子が可愛くないのか優しくしろ…!」 「ご子息、一体其処に如何ほどの技術が使われているとお思いですか。サーが居なければ一生編み物も出来ませんでしたよ」 編み物なんざ生涯する気も無いが、確かに絶大な借りを作ったのは事実だった。 部下2人が去った一室、御坂に追加の麻酔を打たれる神崎は遠い目になる。 「あの子達には言わなかったの?会社に居ない間ISILに追い回されて、死にかけましたって」 「死にかけても無いし、其処からお前に助けられたとは死んでも言いたくない」

ともだちにシェアしよう!