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chapter.4-31
早々とシャツを捲り、されるが儘ながらふてぶてしい。
御坂にしてみれば何時までも子供のような存在は、時折施術の痛みに眉を顰めている。
「さすがTPよりやり方が荒い、生死は二の次だと思ってやがる」
「そうだね。血だらけで来た時は、お父さんに何て言い訳しようかと思ったよ」
「お前なんか俺にミサイル撃とうとしたけどな」
良くも痛み止めも切らして、今まで平静な面を保っていたものだ。
また部下の心配も知らぬ存ぜぬで、明日明後日も隠し通すつもりなのだろうが。
「左手はちゃんと動いた?」
「上々だ」
「普通は暫く入院するものだよ」
「…連中は俺を使って戦争を起こす気だと言ったが、最終目的はお前らしいな」
俄かに話題が方向転換した。
御坂が手を止め、一帯の気温が下がる。
ちゃんと不味い領域に触ったようだ。自覚したまま、神崎は追及を続けていた。
「末端までお前の名前を知っていたぞ、序にさっき周辺国が関与している可能性も言ったな?連中は中東の火種を脅しにして、お前からもっと魅力的なブツを奪う気か。例えば、お前の心臓付近にある生物兵器とか、な」
サイファは黙って目を閉ざしている。
主が命令すれば即刻で銃を抜き、神崎を射殺できるように。
その立ち込める殺気を捉え、神崎は自分の推測が正解だと知れた。
研究所を訪れていた頃と同様。こうでもしなければ、この男から実のある情報は抜き出せない。
「…そうだね。その続きがあったらお前を殺していたかな」
先まで慈愛を乗せていた声で、平然とそんな回答を寄越す。
相手なりの肯定。特に表情の変わらぬ御坂へ、神崎は呑まれつつも口端を吊り上げた。
「その件は君に関係が無いし、知ったところで何の得も無いよ。今から忠告しようとしたのも全くの別件」
「忠告…?」
「ご子息」
今度は副官から声が届く。
この女性も表情は変わらぬながら、案内時に口論していた声とは別人だった。
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